5つのステップで進む教育業界のデジタルトランスフォーメーション|基調講演【EXPO】

新型コロナウイルス感染拡大を受けて、あらゆる産業でアナログからデジタルへの転換、サービスのあり方、働き方の見直しが迫られています。

教育業界においても、少子化、採用難、地域格差、そして、新型コロナウイルス感染拡大と社会課題が広がる中で、未来の教育のあり方、先生の新しい働き方の模索が加速しています。

Studyplus for Schoolでは、教育(Education)とデジタルトランスフォーメーション(Degital Transformation※略称DX)をかけあわせた「EDX」を標語に、未来の教育のあり方、先生の新しい働き方に挑戦する教育事業者を広く発信するEdTechオンライン展示会「EDX EXPO」を定期開催しています。

今回は、2020年11月に第二回目として開催いたしました「EDX EXPO」での、株式会社スタディプラス取締役COOの宮坂による、基調講演の様子をお届けします。

カレンダー機能で生徒が主体的に学習計画を立てられるようになる

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株式会社スタディプラス取締役COOの宮坂です。大学生時代、将来は英語の先生になりたいと思い、大学受験予備校で4年間ほど講師として、高校生を指導していました。

しかし、当時iPhone 3Gが日本に上陸したこともあり、これからインターネットと教育の組み合わせで何か起きるかもしれないなと感じました。そこで、インターネットについて勉強するため、卒業後は、IT系の企業2社で経験を積んだ後、スタディプラスに参画し、これまで、教育事業者の方々のご支援に関わらせていただいています。

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では早速ですが、ここでStudyplus for Schoolに搭載予定の新機能を発表いたします。新機能は、カレンダー機能です。これにより、先生と生徒で予定の共有が可能になります。

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まず、先生と生徒が予定を登録します。一般的なカレンダーアプリ同様、件名や時間、繰り返し登録なども可能です。これらに加え、教材の選択もできます。さらに、例えば、17時から19時に英単語ターゲット2時間の予定を入れると、学習計画に自動で2時間の学習が反映されます。

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これらの予定は、日別のカレンダーとして一覧化され、今日何を勉強するかを簡単に生徒と先生で共有できるようになります。日々の予定を入れていくだけで学習計画が自動的に記録されることもメリットです。

これまで、学習計画を立てる時は、まず1か月くらいの計画を大雑把に立て、そこから逆算し、今週はどれくらいやる、今日はどれくらいやるといったように小さい計画に落とし込んでいました。しかしこれこそ、私たちは課題に感じていました。

というのも、生徒目線に立つと、この大学に合格するために1か月間どれくらい勉強しなくてはいけないのかは分かりません。生徒が集められる情報には限りもあるため、正確な計画を立てることは非常に難しいと思っていました。

そのため、私たちも大学別合格者データをご提供していますが、基本的に、先生方が計画を立て、それを分解するという流れになっていることが多いかと思います。これでは、生徒が受け身になる恐れがあるとも感じていました。

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しかし、もっと短期的なところに目を向けて、24時間から寝る時間や入浴時間などを引いていき、1日これくらいなら勉強できるだろうという考え方なら、生徒も自分自身で計画を立てることができると思います。画像でいうと、左側ではなく、右側のようなやり方を指しています。これをStudyplus for Schoolで実現するため、このような機能を開発しました。

カレンダー機能の使い方のイメージとしては、例えば、自立型学習塾では週に1回30分の面談を行うことが多いと思いますが、その際、Studyplus for Schoolの画面を見ながら生徒と一緒に計画を立て、先生が入力します。

一方で、面談の時間はつくれないという塾もあると思います。その場合には、「この日までにアプリで1学期の計画を登録して」と、生徒に宿題として伝え、計画を入れてもらいます。その後、先生はカレンダーを見ながら内容をチェックし、必要であれば面談をする流れがつくれるようになると思います。

生徒の主体性を育みたい思いと、そこに立ちはだかる壁

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ここからは、弊社のビジョンブックをベースにお話しします。学習塾の未来において、少子化が進むほど、1拠点数百名を集客しなければならない集団指導塾も大変です。個別指導塾も同じく、少子化が進むほど1拠点数十名の講師を採用しなければならず大変です。求人媒体に出稿すると、大学生講師を一人採用するのに10万円も費用がかかってしまうという話も耳にします。

それに加え、大学生の就労観も変わってきています。最近、「タイミー」というスキマバイトアプリが大学生に人気のようです。これは、履歴書不要でスポットで働きたい人向けのサービスです。「時間の過ごし方は自分で決めたい」、「シフトという働き方は負担」と感じている大学生が多いことから人気となっているようです。

その中で、毎週シフトを抑えて固定の生徒を教えるやり方は、今の大学生と相性がよくないかもかもしれません。このような点や、デジタル教材が急速に普及していることから、現在は自立型学習塾が増えてきているのだと思われます。

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また、最近、「人間はAIに仕事を奪われているのか」といった議論も盛んです。確かに、議事録の作成や細々とした事務作業に関しては、AIが行っていくであろうと思います。では、その中で、子どもたちはどういう働き方をすることになっていくのでしょうか。

AIができないことを仕方なく人間がやるようでは、働く楽しさや意義を感じにくい世の中になってしまいます。そうではなく、やりがいや成長を感じることができるような仕事に就いてほしいというのが、私たち大人の願いです。

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経済産業省が、「未来の教室」というプロジェクトを始めましたが、第一次提言の『変化の激しい社会において、個人が責任を伴う「自由」を手に入れて幸せに生きるには、「決められたことを決められたとおりに行う力」以上に、「自分なりの問いを立てて、自分のやり方で、自分なりの答えにたどり着く探求力」を持って、新しい社会経済システムや生活環境を創り出す力を身に付けることが極めて重要になる』という意見には強く共感しています。

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私達なりにここまでのお話を踏まえて、Studyplus for Schoolで実現したいビジョンがこちらです。『変化の激しい社会において、個人が責任を伴う「自由」を手に入れて幸せに生きるには』という部分は重なります。

これからは、責任のある仕事に自由に関われる機会が減っていくのかもしれないという怖さがあります。だからこそ、先生が決めたことを決められた通りに行う力だけでは、力不足になります。自分なりの問いを立て、自分のやり方で、自分なりの答えにたどり着く探求力を持つこと。そして、新しい社会経済システムや生活環境を創り出す力を身につけること、これらが非常に重要になるのではないでしょうか。

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では、「未来の教室」が目指す姿とはどのような形なのでしょうか。まず勉強する意義について、「なぜ数学や世界史を勉強するのか?」など考える必要があります。これは、STEAM化といって、実在する社会の課題を感じ、その解決のためにこういう学問が必要だという入り口から入り、実際に勉強する時には、生徒の習熟度に合わせて進度や内容も個別化させるというものです。

これを実現するためには、新しい学習基盤作りが必要です。そこで、「未来の教室」では、STEAMライブラリというものが発表されました。複数の企業とコラボレーションし、社会の仕事や業界など、入り口部分を学問で深堀りしていくという構造です。

その種類は、かなりバラエティに富んでいるのですが、これを学習塾で行ったらどうなるでしょうか。例えば、30人くらいいる生徒が、自分の興味関心の赴くままに、それぞれ勉強した場合、先生方はほとんど把握できなくなると思います。こういった個別最適化や多様化は、生徒にとっては素晴らしいビジョンですが、先生方にとってはハードルが高いものです。

ここで、私たちがStudyplus for Schoolを開発している意味に立ち返ると、生徒自らが目標を立て、計画を作り、試行錯誤しながら目標を達成する体験をさせてあげたい想いにたどり着きます。生徒自ら動いて、先生方は一歩下がって見守り、時には助けるという関係性が理想です。

しかしながら、日本の教育を俯瞰した時、多くの学校の先生、塾の先生は、生徒が自宅で何をどう学習しているかよく分からない不安から、たくさんの宿題を与え、全てやってくれたら頑張っていると見なす信頼構造があります。これは生徒が自ら考え動く理想とはズレがあります。先生がダメだという話ではありません。先生としては、「見守りたいけれど、自宅で何をやっているかは見えない、分からない」という現実があるだけです。

だからこそ、根本的に解決すべき問題とは、生徒が先生の目の前にいない時も、何を学んでいるのか、何を考えているのかを、きちんと可視化することです。そして、先生方は、「この子はよく頑張っているな、もうちょっと見守ろう」とか「この子は危ういな、ちょっと助けてあげよう」という判断ができる環境を作ることが一番大切です。

ティーチングからコーチングメインにシフトする

こうした中で、最近はよく、デジタルトランスフォーメーションが話題に上がります。少子化が進んでいることにより、集団指導塾も個別指導塾もヒューマンリソース課題があります。だからこそ、デジタル教材が普及してきたわけですが、中には、集団指導塾や個別指導塾のモデル自体をやめ、自立型学習塾というまったく新しい業態に挑戦している塾もあります。これ自体が、デジタルトランスフォーメーションです。

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しかし、今まで直接指導していたところをデジタル教材に置き換えることによって、新しい問題が発生しました。コーチングの空洞化、つまりタブレットを渡すだけでは、ティーチングはできてもコーチングはできないという、根本的な落とし穴です。

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10年ほど前から、学習塾で映像授業が広がり始めましたが、映像授業だけでは勉強せず、成績不振や退塾が起きてしまうケースが多くありました。これまでメイン業務ではなかった学習管理をしっかりやる必要がでてきつつも、対応できなかったためです。簡単に言い換えると、コーチングの要素が重要であるということです。

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ここで、「では、コーチングとは何か」という根本に立ち返る必要があります。いきなり、子どもへのコーチングを考えるのではなく、まずは対大人から考えてみます。まず、子どもと1対1で面談する必要があるかを例にとって解説します。

大人のマネジメントにおいて、定期的に上司と部下で30分ほど雑多な話から仕事の相談まで1 on 1で話しましょうというマネジメントが広がってきました。もし、これが大人にとって必要なら、子どもも先生と1対1での面談が必要なのではないでしょうか。

そこで、ご紹介したいのが、画像の図にあるシチュエーショナルリーダーシップ理論(SL理論)というものです。これは、上司と部下のマネジメントの話ですが、最初は部下も手取り足取り教えなければ仕事ができません。つまり、最初は上司が一方的に指示をします。これがS1の段階です。

仕事に慣れると、上司から一応指示はするものの、部下からの提案も受け入れるというS2に移行します。そして、S3では、まず部下の意見を聞いた後、上司がアドバイスします。最後のS4では、部下を信頼して全てを任せます。

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これは、子どもに対しても同じなのではないでしょうか。最初は、先生に言われたことに取り組むだけですが、慣れてきたら、学習計画を一緒に設定しつつ、進捗をチェックするようにしていきます。

S1が出発点と考えた時、計画や宿題は出すものの、援助的行動は少なくなっていると思います。そこから一歩踏み込んで、学習進捗に対して先生がプロセスに関わっていくと、生徒も、「こういう風に計画立てればいいんだな」と分かっていきます。

そこで次に、生徒が学習計画を自分で設定し、進捗を先生が見守ってあげる段階になります。もし足りなければ、「ここをもっとしっかりやろう」とアドバイスします。最終的に目指すのはS4、つまり、生徒が勉強を自走している状態です。

このように、生徒の自立度合いに応じて、先生は学習管理の強度を柔軟に変えなければいけないのではないかと考えています。一言で言うと、学習管理を先生中心から生徒中心へと持っていくということです。

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生徒によってS1~S4のレベルが変わるとなると、先生はどの生徒が今どの段階なのかを把握していなければ、教室で正しいコミュニケーションがとれなくなります。面談の度に確認していては手間がかかるため、ミュニケーションの方法を同期型から非同期型に変える必要があります。

つまり、生徒が今どの状態か、常にクラウドに保存されていき、先生は手の空いた時にそれを確認するというやり方です。それには、アナログの学習管理では不十分です。デジタルでなければ成り立たないため、Studyplus for Schoolというソリューションが有効になります。

学習記録を習慣づけるための5つのポイント

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学習管理をするにしても、紙の参考書であれば、手帳に記録をつければよかったと思います。しかし、デジタル教材がどんどん普及することによって、先生が確認しなければならない管理画面も増えています。だからこそ、学習管理もアナログからデジタルに移行するべきなのです。

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デジタル教材も様々な種類があり、どれか一つだけがいいというわけではありません。いくつか併用することも多くなっていくと思うことから、やはりデジタル管理が必要です。特に弊社では、できるだけたくさんの教材をひとつにまとめられるようにという想いから、複数の映像教材会社との提携を進めています。

オンライン指導が広がったことにより、教材以外でもデジタルツールを活用している塾が増えました。そこで、弊社も、Zoomとの提携や、Google Classroomとの連携を進めています。

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一方で、生徒が自分の手で記録をつけなければいけないというハードルはまだあります。この習慣をきちんと身につけさせることは、多くの先生が苦労しているところです。実際に、生徒が一人でStudyplusを始めた場合、1か月後もきちんと記録をつけている確率は30%ほどです。

これは、大人がダイエットや家計簿アプリを続けられないのと同じ理由だと思います。ダイエットならライザップという事例があるように、コーチと伴走することで、継続できるものです。Studyplus for Schoolは、教育業界の中で、まさにこれに当たります。

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そこで、Studyplus for Schoolを上手く活用している先生方の共通点を分析しました。その結果が、この5つです。まずは、記録をつけることを教室のルールにし、きちんと「見ているよ」と分かってもらうために「いいね」やコメントなどのフィードバックを毎日します。

1~4つ目は先生からの指示の要素が強いですが、5つ目は少し毛色が違います。「勉強記録をつけるのは当たり前」という雰囲気を、ランキング掲示を通してできると、生徒同士で切磋琢磨する環境が整うようです。

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5つ全てに取り組んでいる教室では、生徒の入力率も高く、一つもできていない教室では記録づけが定着していないという統計が出ています。

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この5つをどう実現していくかは指導形態などによっても変わるため、その部分を弊社担当者よりサポートさせていただいています。

新時代を生き抜くためにデジタルトランスフォーメーションを実現

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最後に、学習塾業界で起きていることを整理します。まず、少子化により生徒募集難や講師採用難が発生し、それらに対応するため、デジタル教材を導入してきました。デジタル教材を導入したことで、コーチングが空洞化してしまう塾が増えました。そのため、これからは、人の役割をティーチング中心ではなく、コーチング中心にシフトしていかなければなりません。

画像の1番と2番は、ICTツールを導入するかどうかという簡単な問題ですが、3番と4番は、どうICTツールを使っていくか、事業としてどうあるべきかというデジタル以外の話になります。

むしろ、マネジメントやオペレーションを教室にどう根付かせていくかという、人が関わる話です。ここが一番難しいところです。

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そこで、今後の学習塾の戦略をまとめると、「自分たちが変わる戦略とそれに付随する困難」を選ぶのか、「変わらない戦略とそれに付随する困難」を選ぶのかが、最初の分岐点だと思います。

変わる場合は、すでにご説明した通り、新しいオペレーションを取り入れていく大変さがあります。変わらない場合は、採用難が続く中で、今まで通り品質を落とさずに取り組んでいかなければならない困難があります。もし変わる戦略を選んだ時には、今日お話ししたようなことが、可能性の一つとしてでてくると思います。

私は、ヒューマンリソース問題を解決するため、そして、これからの社会で生き抜くために、学習管理を先生中心から生徒中心にしていくとよいと考えています。つまり生徒の自立度合いに応じて、先生は学習管理の強度やコーチングの在り方を変えるべきではないでしょうか。

また、先に紹介したカレンダー機能を使うことで、計画がどれくらい上手く立てられているかを知ることで、どれくらい自立できているのか確認できると思います。

今までのように学習管理を同期型で進めていくと、かなりの労力がかかります。非同期型にし、常に情報を共有し合える状態が理想的です。そのためには、学習管理をアナログからデジタルにしなければなりません。

これからデジタル教材が増えていく中で、学習管理を一つのプラットフォームでまとめること。そして、新しいオペレーションを徹底していくこと。困難はありますが、こうした変化が必要ではないでしょうか。

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