オンライン指導における様々なICT・SNSの活用|進学塾SOIL【オンライン指導情報共有会】
新型コロナウィルスの感染拡大により、学習塾業界は教育サービスを提供できず、事業の継続が困難となるリスクが発生しています。これを防ぐために急速に高まっているのが、オンラインでの指導体制の整備の重要性です。
新型コロナウイルス感染拡大の深刻化、そしてオンライン指導に関する事例が少ないことを受けて、Studyplus for School導入校で既にオンライン指導に取り組まれている方々にご協力いただき、オンライン指導に関する情報共有会を開催しています。今回は進学塾SOILの村東先生にお話を伺いました。
進学塾SOILについて
進学塾SOILの村東です。うちの塾は開校1年目で、生徒数は小学生10人、中学生が35人、高校生が25人の生徒がいます。講師は私の他に社員が1名おり、学生講師が10名ほどです。
小学生は寺子屋個別という名前で、小4、小5の生徒に集団個別で指導しています。基本的に各自の進度に合わせてテキストをどんどん進めてもらって、こちらが丸つけしながら添削指導していくというスタイルです。進級して小6になると、集団授業を受けます。
中学生は1クラス12人の集団授業と、1対2の集団個別をやっていました。オンライン指導ではそれがやりにくいので、コマ数を少し減らしてマンツーマンにしています。高校生は週に2コマ大学生講師と1対1で指導を受けます。
生徒は集団授業を受ける日と集団個別を受ける日があって、集団個別の日はオープンスペースで宿題などを各自進めます。私はその場を見て回って、つまずいている生徒には個別で教えるという形です。
コロナ禍の前、集団個別をしに毎日来ている生徒もいました。特に高校生は休みなく来ていて、集団個別の合間に先生がマンツーマンで指導するようなイメージです。「うちは集団個別がメインで授業はおまけです」と言うほど、集団個別がメインになっています。
授業の科目もきっちり決まっているわけではないので、授業料も「何科目で月額いくら」という決め方はしていません。長期休暇の講習などもすべて一緒になっていて、生徒が「夏期講習はいりません」など言っても受けてもらっています。
オンライン指導については、3月から開始しました。遠方からバスを使って通塾している人から始めて、4月から本格的に導入。今は一部希望者のみ対面式でやっています。
使用する機材とICTツール
使用している機材は、iPadとペンシルを5セット、Kindle Fireが5台と、生徒用・講師用のパソコンが1台ずつです。もともと塾にあった、120台のデバイスに接続できるWi-Fiルーターも利用しています。
講師は塾に来てもらっているので、隣にいる人の声を拾わないようヘッドセットも使います。Bluetoothで繋げているとどのヘッドセットがどのiPadに繋がっているか分からなくなるので、講師からは意外と100円ショップのマイク付きイヤホンが好評です。
ICTツールに関しては、指導とコミュニケーションのためにZoomを使っています。画面共有用のため、講師はGoodNotesを、私はExplain Everythingを使っています。他に利用しているのは、LINE公式アカウント(3種類)、Studyplus for School、Google Classroom、学びエイドです。また会員専用ページや自作の解説動画も適宜利用しています。
私は開校前、縁あってオンラインで生徒に授業をする機会がありました。そこで雰囲気や必要なものがわかっていたので、不要なものを買ってしまうこともなく無理なくスタートが切れました。
オンライン指導の流れ
コロナが話題になったころ、オンラインと通塾のどちらがいいかアンケートをとりました。結果は半々だったので、原則オンラインで、Wi-Fiがない生徒などは通塾OKとしました。最初は半々くらいでしたが、コロナが広がるにつれて減っていって、今は10人くらいしか来ていません。その生徒たちは広い教室を使って、3密対策しています。
オンライン指導中、生徒は基本的に家にいます。ただ引き続き通塾を希望している人も数名いるので、そういう生徒は塾に来てソーシャルディスタンスを保った距離で指導してもらっています。
オンライン指導の流れとしては、パソコンをZoomに繋いで講師と生徒が全員入ります。この部屋は、生徒が勉強している様子が見られるオンライン自習室のような場所です。個別指導形式の生徒たちはブレイクアウトセッションで作った部屋に入って、担当する講師に教わります。
個別指導の部屋は、同時にいくつも稼働している状態です。授業中は講師がiPadで画面共有しながら説明し、Kindleをモニターとして使い生徒の顔を映しておきます。
質問対応はLINEで問題文の写真を送ってもらい、それに対して文章で説明ができる場合にはLINEでメッセージを送って解説。指導が必要な場合は、個別指導と同じようにブレイクアウトセッションに誘導して解説、終わったらまた戻るという流れです。
生徒から来た質問で他の生徒にも必要だと思った場合は、解説動画を撮って、ホームページに置くこともあります。
ICTツールの活用:LINE
LINEはコロナ禍の前から使っていたものの、保護者がなかなか登録してくれませんでした。ただオンライン指導となると塾に来ないのでLINEなしでは連絡もしにくいですし、「登録しないとメッセージ送れませんよ」と強気に出て、全員に登録していただきました。
塾によってはLINEの送信頻度が高いと嫌がられることもあるそうです。うちの塾の場合は私のやり方についてきてもらっているので、そういったクレームはありません。
LINEは公式アカウントを3つ使い分けており、保護者専用LINEは保護者と私の連絡用です。生徒専用LINEでは、授業についての質問や進路の相談などを受けつけています。質問専用LINEは、勉強をしていてわからないところがあれば質問するためのものです。
保護専用・生徒専用LINEでは講師についての相談も来る可能性があるので、私だけが見られるようにしています。質問専用LINEは、全てのiPadで閲覧可能です。
ICTツールの活用:会員専用ページ
うちでは会員専用ページを作っており、パスワードをかけて会員のみ閲覧できるようにしています。パスワードはワードプレスのコクーンというテーマを使うと、プラグイン不要で標準機能として設定できます。
このページには解説動画を置いたり、生徒向けの学習戦略を書いたり、私のブログで書いているような内容の詳細版もあります。また何度も同じことを言わなくて済むように、学びエイドの使い方やZoomの接続方法などの説明も載せています。
Studyplusの学習時間ランキングも載せていて、そこは保護者も見ています。0時間の生徒も載せますが、そういうときは「付け忘れているだけだよね。でもお母さんはどう思うかな?先生は、君が頑張っていることは分かっているけどね」とフォローします。
授業の日時もここに貼っておいて、自分の名前を探して受けるという形です、個別で「私の授業時間いつですか?」と聞かれても、「会員専用ページをご覧ください。URLは……」とコピペして送り返して、教えないようにしています。新しく講師を採用したときにも、研修で全て説明するのではなく、各自で見て覚えられるという側面もあるんです。
ICTツールの活用:Studyplus
Studyplusは高校生だけ使っていましたが、オンライン指導を機に中学生にも導入しました。スマホを持っていない人は保護者のスマホ・タブレット借りて、今のところ全員上手く使ってくれています。
主な利用法は、学習計画と学習記録の共有です。それからコミュニケーションをとるのにも役立ちます。業務外の時間で勉強について生徒と話す時間が大切だと思うのですが、遠隔でそれができるのがStudyplusです。生徒もそのあたりを意識してか、今は学習記録をつける際に学習時間だけではなく、振り返りのコメントもたくさん書いてくれています。
Studyplus for Schoolのアナリティクス画面も利用していて、今週の勉強時間をみんなで見て、テストの点数が良い生徒がどれくらい勉強したかを確認しているんです。生徒は成績が伸びている同級生に対してすぐに「頭の作りが違う」と言うので、「違う、勉強時間だ」と言ってこれを見せています。反対に、もし同じくらいの時間なのに点数が伸びていなかったら、やり方が悪いよねという話ができるのもメリットです。
オンライン指導を始めてからは、今までStudyplusに振り返りのコメントを書かなかった生徒も書くようになりました。また講師も記録をチェックする体制に変えたので、授業の最初に講師から「この間Studyplusでこうやって書いてたけど」と話せています。振り返ってみると、今まで書いていなかった生徒とのコミュニケーションが増えました。
ICTツールの活用:Google Classroom
今、中高生の課題管理をすべてGoogle Classroomに集約しています。以前から添削の強化をしたかったのですが、ノートを提出させて見ていくのは本当に大変でした。しかしGoogle Classroomに画像で出してくれれば一括して確認できます。それに終わった生徒から事前に出してくれて、添削が少し遅れても問題ありません。
課題はテキストのページ数を指定して出しています。プリントを出す場合はPDFにして渡して、自宅にタブレットがある生徒はペンシルを使って直接書き込みめますし、タブレットがない生徒はノートに書いて写真であげています。いずれにせよGoogle Classroomにあげてもらうのですが、返却がボタン一つでできるのはものすごく楽です。
授業終わりにはみんなでGoogle Classroomを見て、課題のチェックをします。課題をやっていない生徒は一目瞭然になりますが、そのことについてはあえて言及せず、画面を見せ続けることで自ら気づいてもらうようにしています。
また、授業でやる時間はないものの大事なポイントを課題で出しておいて、きちんと提出してきた生徒に解説動画のURLを送るということもできます。オンライン指導のうちにノウハウや動画を蓄積しておけば、来年からは生徒が自立して課題を進めるオペレーションが組めるかもしれません。今回のコロナ禍で得た一番の収穫は、Google Classroomの活用だと思います。
ICTツールの活用:学びエイド
以前から学びエイドを利用していましたが、オンライン指導になってから利用率が高まりました。映像授業に苦手意識があった生徒も、仕方なく始めてみたら意外と分かりやすいと言っています。ただ、生徒自身が観ているといっても身についていないことがあるんです。そこでたしかめエイドというテストを受けさせ、できなければ「ちゃんと観なさい」とこちらから促しています。
映像授業は反転学習に役立つと思います。高校生は個別指導で週2コマしかないので、全科目授業ができるわけではありません。だからそういう部分をカバーできています。以前は高3生は映像授業をよく観るものの、危機感のない高1生、高2生がなかなか観てくれませんでしたが、オンライン指導に切り替えてからは改善されました。
コミュニケーション面の課題を解決するSNSの活用
オンライン指導を始めてから、コミュニケーション面での課題が生まれました。うちは毎日通ってワイワイ楽しみながら勉強していて、その雰囲気が非常に重要だったんです。オンライン指導ではこの課題を解決するために利用するツールを増やしました。
ツールを増やしたおかげで、オンライン指導前よりもコミュニケーション機会を得られるようになりました。保護者とのやり取りも増えましたし、生徒ともたくさんメッセージを送り合っています。Studyplusでのコミュニケーションも増えました。
またTwitterとInstagramもやっていますが、これはいわば裏活用というイメージです。LINEでは業務連絡などをするのですが、SNSでは塾の裏側を見せて、保護者との距離を近づけたいと思っています。
保護者や生徒とのコミュニケーションを増やすときに心がけたのは、「ストーリーを見せる」ということです。オンライン指導を始めるために塾側は労力も経費もかけていますが、保護者からすると「対面のときより質が落ちているのでは」という思いがあります。
塾によっては値下げを交渉されることもあるようですが、うちでは授業料は一切下げていません。それで納得してもらうためにも、どういうストーリーでオンライン指導をやっているのかをご理解いただく必要があるんです。
例えば格好つけて、「こんなものなんでもないですよ」と言うよりも、機材をそろえるのにいくらかかったとかを見せた方がいいでしょう。しかしわざわざLINEで「20万かかりました」とは送れないので、SNSを活用しています。
Twitterにそういうことを書くと、「先生、釣り道具欲しがっていたのに、我慢してiPad買ってくれたんですね…」と言ってもらえたりします。こういう具体的な頑張り以外にも、コンセプトや実現したいことをひとり言として伝えやすいのもTwitterのメリットです。
SNSは対保護者だけでなく、対生徒にも効果的です。例えば「こういうやり方をしていると伸びないよ」ということ、直接は言わず間接的に伝えます。反対に、褒めてあげることもあります。直接褒めてあげるのにプラスしてSNSに書き込んで間接的に褒めると、すごく喜んでくれるんです。
SNSを使うコツは、自分の腹の内の良いところを見せること。悪いところは絶対に見せてはいけないと思います。いわゆるキラキラ投稿だけで十分なので、心の中を上手く見せていくことです。
添削とフィードバックに注力
対面で指導していたときは、生徒の勉強している様子をよく観察して、「ここは分かったフリしている」「ここは勉強のやり方の効率が悪い」というようなところまで観ていました。それでフィードバックして生徒の方向修正をしていたのですが、やはりオンラインだとそれは難しいです。
だから私が手元の動きを見て感覚でやっていくという方法をやめて、ノートなどの提出物の添削を増やすという形で対応しています。やり方は変わりましたが、生徒本人が本当に理解しているかをチェックすること自体は変わりません。
今後は基本的に元のやり方にもどりますが、添削で見ていくということも同時並行でやっていきます。特に復習テストなどはしっかり添削した方が効果的なので、うまく使い分けて行く予定です。
オンライン指導を始めるときの心構え
私の方針として、「できないことはやらない」という考えがあります。とにかくできる生徒・やる生徒から優先して対応してあげるようにしないと、身動き取れなくなるからです。やらない生徒に何か働きかけても保護者から感謝されるということはありませんし、特にプラスになりません。
だからオンライン指導を始めるときも、やらない人がいるかもしれないから始めないという選択肢はありませんでした。もともと私のブログを読んだり、キャラクターをわかって入ってきてくれる方が多いので、塾の習慣として「何かやる時にこちらからお伺いを立てる」ということはしないんです。
コロナ禍が始まったころも「通塾したいかオンラインがいいか」「オンラインにするなら何時ごろがいいか」とアンケートは取りましたが、その結果は伝えていません。結果を受けて「私はこう考えるのでこうします」と伝えて終わりです。しかし実際にやってみて、良かったと思っています。
オンライン指導を始めて感じたメリット
オンライン指導をきっかけに始めたものでよかったことは、今後も続けていこうと思います。
例えば、Zoomはオンライン指導終了後も引き続き利用する予定です。例えば台風で休校する時や、欠席対応する時、忙しい保護者の方とオンラインで面談する時など様々な使い方ができます。家が遠くて通塾がしんどいという生徒もいるので、オンライン自習室も常に開けて質問対応をしていきます。
Studyplusに関しても、あまり記録をつけない生徒が「やらないとまずい」と意識改革できました。今後オンライン指導が終わっても、しっかり記録を残してもらおうと思います。
ほかにも情報共有などにICTツールを駆使することでペーパーレス化が進んだうえ、会員制のページも充実しました。こうした変化は塾にとってレガシーになります。
ポストコロナで活きるオンライン指導をする
コロナ禍でいろいろとやってみて、今は「オンラインで指導するか、対面でやっていくか」という考え方はしていません。そうではなく「オンライン指導をやってみたら、対面授業もパワーアップできた」と思えました。実際に退会・休会をした生徒もいませんでしたし、むしろオンライン指導を希望して近隣の塾からの転塾もあったくらいです。
こういう結果になったのは、コロナ禍で通塾ができなくなったとき「この期間に何がしたいか?」という観点から考えたからだと思います。オンライン指導でこの局面を乗り切ることだけを考えてお金や労力かけても、コロナ禍が明けたら何も残りません。
だからオンライン指導というのはあくまでおまけであって、「長期的に見て、塾の力が強くなるためにはどうしたらいいか」という点を意識して改革をしました。目の前の危機にとらわれるのではなく、塾としてどうしたらプラスになるかという目線を持つとよいと思います。
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