見出し画像

講師による遠隔面談で地域による不利な状況を解消|京大個別会原町本校【Studyplus for School Award 2021】

Studyplus for School Award 2021とは、少子化・採用難・地域格差という社会課題が広がる中で、未来の教育の在り方・先生の新しい働き方に果敢に挑戦する教育機関を表彰するものです。

昨年に続き今年も、受賞校によるプレゼンテーションを含むイベントをオンラインで開催いたしました。その模様をnoteでもお伝えしていきます。
今回ご紹介するのは、自立指導部門で受賞された、京大個別会原町本校(福島県)の佐藤先生の回です。

京大個別会原町本校のHPはこちら
Studyplus for Schoolについてのお問い合わせはこちら

勉強内容ではなく勉強法や目標設定方法を教える自立型指導塾

私は大学院卒業後に東京で経営コンサルの会社と、神奈川県の塾で塾講師の修行を行ったのちに、地元福島県南相馬市に戻り2014年2月に当塾を始めました。南相馬市は福島原発から20km圏内に位置しており、住民全員が避難した地区です。現在の人口は5万3000人で、小学生1767人、中学生973人、高校生1068人です。

私が塾を始めたころの南相馬市は、やっとまた人が住めるようになったばかりで、もともといた住民の5割ほどが戻ってきていました。全域避難指示が解除された2016年以降の帰還率は7割です。残りの3割は、もう戻ってこないだろうと言われています。特に、子どもがいる家庭はほとんど他地域に移住しています。

また、当塾のある地域は、福島県の中で最も学力が低い地域です。どこかの大学に通学するのは基本的に不可能で、通うとしたら片道1時間半~2時間かけて仙台まで出るか、バスで福島市に出るしかありません。つまり、周りに大学生がいない状況です。

進学校と呼ばれているところが1校あるのですが、偏差値は49です。定員も1.0倍で、希望すればだいたい入れます。ですので、高校3年生になったとき、全国のライバルと闘わなければならない大学受験でとても苦しむ生徒が多くなります。

当塾には、2つのミッションがあります。それは「子どもたちの人生を変える」と「教育の情報格差をなくす」です。特に後者に関しては、中学や高校1年生の段階から、全国ではどういう状況か伝えることで、「考えに格差がある」「情報が入ってこない地域にいる」という自覚を持ってもらうようにしています。情報格差をなくすためにも、全国の最新ツールや首都圏で取り入れられているものをいち早く導入しています。

当塾の指導方針ですが、勉強の内容は教えないようにしています。勉強の仕方や質問の仕方、目標設定の方法などを教え、自立を促しています。生徒から勉強内容について質問されても、答えを教えるのではなく、「分からない問題をどうやって分かるようにするか」について話します。

もともとは集団個別で1対3の指導をしていたのですが、口コミが広がり生徒数が増え、私一人で対応しきれなくなったため、2016年3月から自立指導に切り替えました。

現在の生徒数は110人で、卒塾生のアルバイト講師を雇用しています。彼らは全員大学生で、東京や千葉など遠隔地から仕事をしてくれています。卒塾生の講師は、地域的に普通なら出会えないお兄さん・お姉さん世代となるので、そういう講師と話せる環境に生徒は喜んでいます。大人よりも話しやすいですし、少し前まで高校生だった立場の方が説得力が増すこともあります。

生徒の対象は小学生から高校生で、コロナ禍でも塾に来ている生徒が多いです。緊急事態宣言の時には来ませんでしたが、ここ半年は通塾しています。

生徒との接触回数を増やしモチベーションを上げる

Studyplus for School導入のきっかけは、月に一度の面談に課題を感じていいたためです。当時は、毎月30分の面談で、年間計画をもとにカリキュラムの修正などを行っていたのですが、中学生に比重が偏り、高校生をうまくサポートしきれず、退塾する生徒が出てきました。

原因は、「生徒との接触回数が少ないこと」、それにより「モチベーションの維持が難しくなること」、そして勉「強の進捗状況が不透明でブラックボックス化されていたこと」です。これを解消するためにStudyplus for Schoolを導入しました。

そこからすぐに、「第一次スタプラ改革」を始めました。接触回数の少なさとモチベーション維持について解決するため、卒塾生のアルバイトにメッセージで密に連絡を取ってもらうようにしました。

卒塾生に任せているのは、私が時間を取れにくいこと、せっかくなら地元の会社で社会経験をしてもらいたいと思ったことが理由です。

進捗状況の不透明さについては、Studyplus for Schoolのアナリティクス機能を使うことで、いつでもどこでも把握できるようになると思っていました。しかし実際は、生徒が記録してくれないという問題にぶつかりました。そこでスタディプラスの担当の方に相談し、他塾での事例を教えてもらいました。

教わる中でとにかく毎日連絡することが大切だと知り、まず「記録してね」というメッセージをニコニコした絵文字付きで送り、記録をしない日が続くと2日目、3日目になるにつれて絵文字の顔を怖い表情に変えるなど工夫をしました。

Award2021登壇資料_0603京大個別会原町本校(佐藤先生).pptx-16

その結果、こちらの画像の通り記録率がアップしました。一時は25%まで落ちていたのですが、徐々に上がっていき、4か月には80%、その後100%になりました。紫の部分は年度の替わり目です。一度落ちても声掛けを続ければ100%に戻るので、毎日連絡を取ることが入力率を上げる肝だと思います。

よく「どうやってStudyplus for Schoolを活用しているか」と質問をいただきますが、私がお伝えしているのは「スタディプラスの方に言われたことに取り組む」「ほかの先生が共有してくれたツールを使用する」という2点です。

何かオリジナルな使い方をしたわけではなく、この2点を徹底しました。私は生徒に勉強の方法を教えるときにも、まずは型にはまった勉強をするよう伝えています。いきなりオリジナルの方法でやっても成績は上がりません。だから自分がStudyplus for Schoolを使うときも、まず基本を守って運用しました。

カルテ機能で面談のムラが生まれず生徒の進捗もすぐ把握できる

導入からしばらくは、私がワンマン体制で生徒対応をしていましたが、人数が増えてきたことによりだんだんと難しくなってきました。また、アルバイト講師の数も増え、すべて遠隔面談になったことで不安点も生まれました。

そこで、「第二次スタプラ改革」をすることに決めました。この目的は、「指導の質を落とさず、普遍的・再現性を追求」すること、そして「塾長が全生徒の学習状況を把握できるようにする」ことの2点です。

Award2021登壇資料_0603京大個別会原町本校(佐藤先生).pptx-21

まずオンライン面談についてですが、当塾では講師が各地方から面談をしており、生徒は塾や自宅からアクセスします。頻度は週1回で、面談で使うのはPDCAシートです。事前に提出してもらったシートをもとに面談しています。

また、組織体制を新たに構築しました。高等部のマネージャーは1人で、全生徒のStudyplus for School入力率チェック、主任講師の育成、教務内容の指示を行います。その下に高等部主任講師が2人おり、担当生徒のStudyplus for School入力率チェック、担当生徒へのメッセージ、講師育成を行います。高等部講師は3人おり、担当生徒のStudyplus for School入力率チェック、担当生徒へのメッセージを行います。

役職によって、それぞれ権限を与えました。マネージャーは私に、主任講師はマネージャーに、講師は主任講師に相談ができます。全員から私のところに相談が来ると対応しきれないため、こうした形にしました。

例えば、生徒の入力率について、記録がついていない生徒を見つけたら主任講師に連絡して、主任講師が直接生徒に連絡を入れます。

また、当塾では講師が自由に会議が行えるよう研修費も支払っています。この会議を開くとき、マネージャーは全員を集めて会議を開くことができ、主任講師は高等部の新人講師らと話ができます。

教務の相談や生徒からのメッセージについてなどは、Slackで話し合います。主任講師以上のチャンネルと全講師が入っているチャンネルを準備して、私は極力そこには入らず、何か聞かれた場合だけ答えています。Slackで話し合うことによって、「生徒にこう聞かれたらこう答える」というパターンをみんなで作り、共有しています。

講師には、生徒と面談した時間を時給換算して支払い、固定費として別途10時間分、主任講師には20時間分を支払います。ここに含まれるのは、Studyplus for Schoolで「いいね」を押したり、面談の準備をしたり、他の先生とSlackで相談したりといった作業です。

Award2021登壇資料_0603京大個別会原町本校(佐藤先生).pptx-25

そして、「面談における普遍的・再現性」を実現するため、フローを決めました。面談が始まったらまず何をして、PDCAに沿ってどんなふうにチェックをするかが定められています。これをもとにカルテ機能のテンプレートを準備しておいて、そこに打ち込んでいけば面談ができる仕組みです。

「塾長が全生徒の学習状況を把握できるようにする」という目的については、Studyplus for Schoolを中心に様々なツールを活用しています。まずはアナリティクスを見て時間軸で確認をし、カルテを見て学習状況をチェックします。実際のノートなどを見たいときに使うのは、「Google Classroom™」です。

他にも、生徒がいつ面談しているか、講師がどんな研修や会議をしているか、どんな相談をしているかなども、カレンダーやSlackで確認します。講師研修の議事録チェックで使うのはNotionです。生徒の成績管理、中間テスト・期末テストの確認にもNotionが役立ちます。

ですが、ゆくゆくは全て一つのツールに集約していきたいと思っています。例えば、Studyplus for Schoolに2枚以上の写真をアップできるようになれば、「Google Classroom」を使う理由はなくなりますし、成績管理や講師同士のメッセージなども今後できるようになれば、Studyplus for Schoolに集約していきたいと考えています。

情報発信をすることで教育の格差をなくすことを目指す

先日実装されたコンテンツ配信機能は、私たちにとって非常にありがたい機能だと感じています。私は自分で動画を作ることはなく、YouTubeの動画を指定して見せていたのですが、それを講座化できるようになりました。この機能では、再生した時間が勉強時間にカウントされる点が気に入っていて、動画を止めて問題を解いてる時間もわかるので、よりリアルに勉強している様子が可視化できます。

Award2021登壇資料_0603京大個別会原町本校(佐藤先生).pptx-28

カレンダー機能も非常に有効です。生徒側からすれば可処分時間が一目瞭然となり、それに対して何の科目をどう入れるか考えることができます。また、繰り返し機能も便利です。30分という短い時間の中で、勉強計画が立てやすくなりました。

私たちは、「教育だけは平等でなくてはならない。南相馬に生まれたからという理由で、情報、コミュニティ、将来の選択肢に差があってはならない」と思っています。

そこで私たちが熱い想いと志を持って、今の時代だからこそ使えるICT技術を活用し、この地域の子どもたちの人生を変える場所の役割を担っていきたいと思っています。東日本大震災では多くの方々に助けられたので、今度は私たちが情報発信などの面で恩返ししていきたいと思います。


この記事が参加している募集

イベントレポ

みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!