ICTと電話の組み合わせでオンライン指導でのコミュニケーションを最大化する|城南予備校DUO【オンライン指導情報共有会】
新型コロナウィルスの感染拡大により、学習塾業界は教育サービスを提供できず、事業の継続が困難となるリスクが発生しています。これを防ぐために急速に高まっているのが、オンラインでの指導体制の整備の重要性です。
新型コロナウイルス感染拡大の深刻化、そしてオンライン指導に関する事例が少ないことを受けて、Studyplus for School導入校で既にオンライン指導に取り組まれている方々にご協力いただき、オンライン指導に関する情報共有会を開催しています。今回は城南予備校DUOの村上先生にお話を伺いました。
城南予備校DUOについて
城南進学研究社の村上です。城南進学研究社は、1961年から城南予備校という大学受験用の予備校を運営していました。2002年に個別指導の城南コベッツをブランディングし、2004年にはコベッツ単独の教室を展開を始めました。
城南予備校DUOは、2018年に始めた弊社の中で最も後発のブランドです。城南予備校DUOは、AI・ICTとヒトの掛け合わせをコンセプトとしています。
現在、東京・神奈川・埼玉・千葉で14教場を展開し、生徒は6割が高校生と高卒生、4割が中学生です。小学生は、ほんの少数だけいます。平均の在籍生徒数は、年のピークで100~120名です。職員は2名おり、それに加えてアルバイトが10名ほどです。
使用しているICTツールと指導法
城南予備校DUOで使用しているICTツールは、「atama+」「デキタス」「Studyplus for School」です。「デキタス」とは、弊社で開発した小中学生向けの家庭用の教材です。
生徒指導の方法は、いくつかのコースに分かれています。
・atama+の個別指導
学生講師がatama+を使って個別指導を行う。
・1対2の個別指導
学生講師一人、生徒二人のいわゆる個別指導を行う。
・DUO指導
城南予備校で教えていたプロ講師による、大学受験に特化した集団演習授業を行う。上記2つのコースを受講していた生徒が高2の後半以降から受講し、高3生や既卒生も対象。
・新学力指導
1対10までのグループ指導。プロ講師が英語の4技能や表現力の授業を行う。
・推薦指導
推薦を受ける生徒に向けて、学生講師が指導する。
これらすべての学習を、Studyplus for Schoolで管理しています。現在「atama+を用いた個別指導」を受講している生徒と「1対2の個別指導」の割合が7:3くらいです。これを9:1くらいまで高めて教場の運営をスマートにしたいと思っています。
ICTツールで、塾では使っていませんが生徒が学校でClassiを使っているパターンは多いです。その場合でも、「Studyplusと両方記録するのは面倒」という話は聞いたことはありません。どちらかというと、学校側としては一方的な配信として使っているところが多いようです。
また、生徒とのやり取りはStudyplus for Schoolを通すのではなく、そのままLINEで直接すればいいという考えもありますが、リスクを考えるとStudyplus for Schoolを介した方がいいと思っています。
城南予備校ではLINEで直接やり取りしていたこともありましたが、結局あまり機能しませんでした。Studyplusからメッセージがくると、学習と紐づけられるというのも大きいと思います。
コロナ騒動によるオンライン指導への切り替え
今、城南予備校DUOでは対面指導をすべて中止しています。
2月24日から新型コロナウイルス対策のフェーズが上がることを想定して、対応策を検討しました。ここで話し始めたのは、生徒や保護者からの問い合わせが出たことと、欠席者が増えたことがポイントでした。ものすごい危機感があったというわけではありませんが、北海道で緊急事態が宣言されたこともあり、いざという時のために対応策を少し検討したくらいです。
しかし3日後に全国一斉臨時休校要請が出て、一気にフェーズが上がり、最初の決断を迫られました。そんな中、生徒のスマートフォンやPCでatama+の教材が受けられるようになるという話が出ました。
ですので、28日にオンライン化を決定し、3月2日から「atama+の個別指導」を受講している生徒に関してはすべてオンライン指導に切り替えました。「1対2の個別指導」を受けている生徒と「DUO指導」を受けている生徒は、教室でも指導はするものの、通塾するか休学するかは各自に選んでもらいました。
そのまま14日まで過ごし、16日からはオンライン指導を一度中止し、通塾しての春期講習を始めました。しかし30日に小池知事から夜間の外出自粛要請があったので、17時半以降の授業をカットして再び「atama+の個別指導」をオンラインでやり始めました。
このタイミングで、いずれ緊急事態宣言が出るだろうということは明白だったので、全指導をオンライン化することを決定。一週間で準備をして、4月8日の緊急事態宣言の発令以降は生徒の通塾を禁止し、全てオンライン指導に切り替えたという流れです。
「atama+の個別指導」のオンラインでの指導方法
現在、城南予備校DUOの中で最大勢力となっているのが「atama+の個別指導」です。コーチと呼ばれる学生講師に教場に出勤してもらい、生徒は自宅でコーチングを受けています。ツールとして、コロナ騒動を受けてリリースされたWeb版のatama+を利用しています。
本来はZoomで生徒の手元を映そうと考えていましたが、そうなるとatama+を使うデバイスとZoomを使うデバイス、合計2つ必要になってしまいます。ところがほとんどの生徒はスマホ1つだけでやっていくということだったので、このやり方は断念しました。
そこで、時間を決めて電話でのコーチングはどうかと考えました。事前に授業の時間を決めて、授業前・授業を始めて何分後・授業後に連絡します。しかしいざやってみると、「今まで対面で見えていた手元が見えない」という問題が解決していないということもあり、上手くいきませんでした。
そこでStudyplusのメッセージで、生徒にノートの写真を送ってもらえばいいのではないかというアイディアを考えました。これならリアルタイムでノートをチェックできるので、手元が見えないという課題も解決するのではないかと思えたのです。
実際に電話とあわせてこのやり方を併用して運用したら、一週間で状況が改善したという声がコーチから上がってきました。また、授業後もStudyplusで反省点や次の目標もやりとりできるようになり、双方化した指導になったかなと思っています。これは使えるということで、うちだけでなく他のブランドでも爆発的にこの方法が広がっています。
このやり方の課題としては、通常では1対10くらいで教えているのに対し、1対6くらいが限界というところです。また教室の電話は数が限られており、時間をずらしながら連絡しているので、臨機応変な対応にもまだ難があります。
それから、中学生の対応が難しいです。高校生に比べて集中力がなく、授業が始まってから反応がないので連絡してみたら「ご飯食べてました」と言われることもあります。また、この運用をするためには、Studyplus用とコーチのアプリ用に結構な数のiPadも必要です。
いずれにせよまだ課題はありますが、弊社の中ではこれが一番上手くいっている運用方法です。慣れてきた教室では、3人のスタッフで32名の生徒を同じ時間帯で回せています。
「1対2の個別指導」のオンラインでの指導方法
うちでは3割くらいの生徒が「1対2の個別指導」を受けていますが、このコースでは講師は教室に出勤し、自宅にいる生徒にZoomを使って指導しています。
やり方としては、教室でZoomのルーム設定を行い、招待のURLを講師と生徒に共有、そこで指導するという流れです。また、人数を1対2ではなく1対1に切り替えました。
この運用方法の課題点は、ITリテラシーの低さです。うちの場合学校でZoomを使っている生徒も結構いるので、現状では生徒のITリテラシーが一番高いです。次が大学でZoomを使い始めた講師、最後がうちの職員です。ただ、これはZoomを使っていく中で少しずつ改善されつつあります。
教材の著作権も課題の一つです。教材によっては教室外で使用できないものもあるので、PDF化は一切禁止などかなり気を使っています。また、個人情報の問題もあります。やろうと思えば勝手に録画したり、生徒と講師がお互いの個人情報を特定したりもできるでしょう。だから1対2をやめて、講師は出勤という形にしています。
今後は、いつまで講師を出勤させるかという問題もあります。コロナ禍が深刻化するにつれて、出勤を見合わせたいとか、4月いっぱいは休みたいという講師も出てきて、今は全体の10%くらいになってきました。またatama+の指導と重複しますが、生徒の手元を見ずに指導する難しさもあります。
最後に保護者対応です。Zoomでの指導となると後ろに保護者がいるという想定をせざるを得ないので、今後講師も在宅で指導するとなったときに身なりや言葉遣いをどう監督していくかがポイントになります。
「DUO指導」のオンラインでの指導方法
「DUO指導」のオンライン化は今日(4/17)からスタートしました。講師は出勤し、生徒は自宅でZoomによる指導を受ける形です。
1対10での授業ですが、チャットだとコミュニケーションが難しいので講師もStudyplusのアカウントを作りそちらでメッセージをやり取りしています。今後、ITリテラシーや個人情報、著作権の部分で課題が生まれていくかと思います。
オンラインでの生徒とのコミュニケーションの取り方
コロナ禍が深刻化する前、学生講師が週1回、Studyplus for Schoolを使って生徒と面談するという取り組みを始めようとしていました。それがでこうした状況になったので、より「授業以外でどういう風に生徒とコミュニケーションを取るか」が課題になりました。
現在、Studyplus for Schoolのメッセージ機能と電話を活用して面談をしています。面談以外でも、アナリティクスを元に講師が課題を送信し、生徒も状況説明や疑問点を返信というやり取りが発生している状態です。ただなるべく顔を見ながらの対応をしたいので、来週以降はZoomの活用を想定しています。
オンライン指導における電話の有用性
電話とZoomを比較すると、電話の方が個人情報の観点から見てリスクが少ないでしょう。Zoomでは色んなものが映ってしまうので、得られる情報量も多いです。ただもちろん電話が万能なわけではなく、携帯を固定して音声だけの指導は不可能だと思います。しかも映像が見えないことで、本当はできていない部分も「指導できている」とお互い勘違いしてしまいがちになります。
atama+と個別指導の方では、生徒の勉強がatama+上で滞ったり間違いが頻発すると、アラートがコーチに届くようになっているので、そういうつまずいている生徒に重点的に電話をしたいと思っています。
ただ生徒数が増えてくるとそうも行かなくなるので、本当にまずそうな生徒にだけ電話をかけて、それ以外はStudyplus for Schoolのメッセージで対応しています。
オンライン指導への生徒・保護者の反応
最初に「atama+と個別指導」をオンライン指導に切り替えたころ、安全やオンライン指導への切り替えを理由に休退学した生徒はわずか全体の1%でした。続いて「1対2の個別指導」に関しても、休退塾した生徒は全体の3%です。当時は世論的にも、なぜ休校なんだという風潮もありました。
4月の緊急事態宣言発令以降、授業料を変更せずすべてオンライン指導に切り替えた結果、休退学に至った生徒は全体の10%ほどに上昇しました。今もじわじわと休退学者は増えているので、なんとか15~20%の幅に収めたいと思っています。
ただし塾の場所によっても差があり、最初の段階では町田や平塚、南浦和の周辺部で休学者が増えました。都心部は持ちこたえていたのですが、コロナが深刻化するにつれて、今は三軒茶屋や自由が丘の教室で増えています。
実は、休退学する生徒の半分は小学生です。正直に言うと小学生のニーズは学童的なものも含まれているので、一旦休学するというパターンが増えているところです。
今後の目標はコミュニケーション面の向上
うちはまだまだ、オンライン授業のクオリティーに改善の余地が大きくあります。インフラ部分でもオペレーションの部分でも課題があり、いくらでも手を入れられる状況です。
個人的な見解ですが、もう少し大きな会社でお金があれば、授業の内容はもっと向上させられると思います。現に、そちらに振り切っている大手塾さんもあるでしょう。ただうちの場合、かけられる労力のコストも限られています。
さらに、いつまで職員を出勤させるかという問題も抱えています。教室によって差はありますが、全体で10%前後の講師が休みを申請していて、厳しいところでは30%くらいが脱落している教室もあります。
こういう現状で二兎を追うことはできないので、どこかに注力しないといけないと思っているところです。
その中で私たちが頑張りたいのが、コミュニケーションの面です。授業に関しては持ち堪えられるだけは今のクオリティーでやって、そこで浮いたコストを、授業以外の面談や生徒とのコミュニケーションに全投入したいと思っています。
基本的にはStudyplusでの接触をメインにしながら、次週以降はZoomを活用した面談を本格的にやっていく予定です。だから学生講師がいつまで教室に来られるのか、職員はどうするのか、講師は自宅から面談対応させるのか。このあたりを試行錯誤していきたいと思います。
***
オンライン指導会は、今後継続的に開催していきます。ご興味のある方はこちらからぜひお申込みください。
Studyplus for Schoolについてのお問い合わせはこちら。