粒度の細かい計画・予測・振り返りで、受験以外にも活かせるスキルを磨く (前編)|沖縄ブロードバンド予備校
Studyplus for Schoolを導入いただいた先生方に、お話を伺うコーナー。今回は、生徒が立てる学習目標の粒度が細かく、テストの予測点を生徒に算出させ失点分析も徹底して行うといった特徴のある沖縄ブロードバンド予備校さんの町田塾長にお話を伺います。どうしてここまでの計画を生徒が立てられるのか、塾の成り立ちや先生のバックグラウンドを含めてお聞きします。
集客難から一転、キャッチコピーを活かし1週間で20人入塾
—初めに、開塾された頃について教えていただけますか?
開塾したのは8年前です。私の中で、予備校といえば東進さんや河合塾のマナビスさんのように、映像授業を用いているイメージがありました。そこで同じ形式を用いて自分で塾をやってみようと思ったんです。しかしチラシを配ってもなかなか生徒が来ず、集客に苦労しました。
7月にオープンしたのでなんとか夏季講習が始まるまでには10人集めたいと思っていました。それだけいれば資金面でも問題ない計算だったのですが、実際にそれだけ集めるのは難しかったです。新聞や広告にお金を使ったり、毎日いろんな学校に行ってチラシを配ったりしましたが、まったく反応がありませんでした。
—まだ映像授業が評価される前の時代ですよね。
そうです。そうこうしているうちに夏が終わって、毎日頑張っていたものの反応がないので、やり方を根本から変えないと無理だと思いました。9月の後半には資金繰りも厳しくなってきて、それに伴って私自身のメンタルも辛くなって。正常な思考で考えられず、あまり寝られなくなりました。
朝から教室に来て、誰もいない教室を掃除して、夜までずっと一人。これではダメだと思ってコーチングを受けました。
—コーチングですか!効果はいかがでしたか?
はい。1回のセッションが1万5千円を6回、なけなしのお金で払ってコーチングしてもらいました。そうしたら、視点が変わったんです。イメージとしては、眼鏡をかけ変える感じですね。今まではマイナスの要因しか見えなかった眼鏡をしていたのが、可能性だけが見える眼鏡に変わったような気がしました。
それと同時に、キャッチコピーが浮かんだんです。それが、『みんなで勉強しよう』でした。
—塾にキャッチコピーを作ることができたんですね。
はい。集客で苦労してた頃は、「うちの商品はいいですよ」というアピールの仕方をしていました。しかしコーチングを受けてから視点が変わって、キャッチコピーを思いつきこれをアピールするように変えたんです。
早速そのコピーを入れたチラシを作ろうと思ったのですがお金がなかったので、自分でワードで編集して、コピーして、100枚ほど那覇国際高校の前で配りました。
—新しいチラシの効果はいかがでしたか?
チラシを配ったその日のうちに問い合わせがあって、生徒が来てくれました。高3の子だったのですが、那覇国際高校は進学校ですが県立高校ですから、私立と違ってそんなにたくさんお金を使えるわけではないと。兄弟も多いこともあって、琉球大学に行くのに70~80万も予備校に支払うことは考えていないとのことでした。
ただ、学校が19時までしか使えないし、スタバやマックに行くにしてもお金がかかるし、家はなかなか勉強できない環境だと。そういう話を聞いて、そこに需要があるんだと気付きました。
—勉強できる場所自体がなかったんですね。
そうだったんです。それで最初に来た生徒が別の生徒を連れてきてくれて、その子が塾を見て「先生、生徒いませんね」と。「連れてきましょうか?」というのでお願いをしたら、影響力のある子だったようで一週間で20人連れてきてくれました。
要するに、予備校には通っていないけど場所が欲しい子たちがいたんです。だからこそ『みんなで勉強しよう』というキャッチコピーも活きたと思います。
—塾の経営が軌道に乗ったんですね。
はい。10月~2月の5か月で収入が得られ、なんとか首の皮一枚繋がりました。しかも元々勉強のできる子たちだったのでみんないい大学に入ってくれて、翌年は卒業生の紹介で80名ほど集まりました。その翌年には100名くらい入ってきたんです。
受験後も活かせる粒度の細かい計画の立て方を学ぶ
—沖縄ブロードバンド予備校さんは、かなり粒度の細かい計画を生徒に立てさせていらっしゃる印象です。
それは、開塾前の経験があるからかもしれないですね。私は大学卒業がに旅行会社で営業をしていました。そこでトップの成績を残しているセールスマンがいたのですが、その方は不思議なことに外に行かず、常に支店にいたんです。
これは、初めのうちに大きなクライアントを開拓していたからでした。開拓のためにものすごく緻密に計画の方を立てているのを身近で見ていました。この経験が今の計画の立て方に繋がっています。
—営業職としての経験も塾で活かされているんですね。
はい。生徒とミーティングする時も、今週の申告時間は何時間だと申告させて、何をいつまでにどうするのかをしっかり固めていきます。こういうやり方は、受験以外のところでも役立つと思うんです。自分が大学を出たころはバブリーな時代で、まだ終身雇用もあったし企業がいろんなことを教えてくれました。でも、今は全然違います。
だから、これが子どもたちが大学受験を通じて戦略や計画の立て方を学べばまた次に活かせると思うんです。大学受験はゴールではなく、スタートでしかありませんから。
数値把握で面談の制度を上げ、月齢テストで模試を意識させる
—大学受験はあくまでスタートという意識があるということでしょうか。
はい、ただやはり、学習管理型予備校という名目でやっている中で、保護者や生徒と面談するときに数字がないと困ってしまいます。2、3年目は模試の回収もほぼしていなくて、生徒のカルテもありませんでした。その場その場で、どうなんだと聞く形でしたね。
—面談について課題があったんですね。
はい、こういうやり方をしていては面談の精度も上がりません。だから常に模試を意識して、模試のない月には月例テストを入れて、常に定点観測をしました。数字がどのように動くのかを追っていくと面談がしやすいしアドバイスも的確になるんですよね
こうなると、親御さんの安心感も生まれます。夏前に全受験生の保護者と面談をしましたが、数字を羅列して「こうです」と説明すると、「ここまで把握してくれているの?」と思ってもらえるみたいです。それから今回初めて夏期講習会という名目で料金をただきましたが、すごく喜んでいただけたと思います。
テストへの事前準備と失点分析で生徒の思考を深める
—面談は模試の点数を見ながらされているんですか?
はい。うちでは勉強のカルテをアナログで作っていました。今はここから進化させて、テスト前に自分の予測点と、それぞれの大問にどのくらいの時間をかけるかという予定を書き込みます。
例えば国語だったら、評論や小説、古文、漢文をそれぞれどのくらいの所要時間で、どんな順番で解く予定か書かせた上で、テストが終わった後に実際の得点や所要時間を書いていく形です。
—かなり細かいですね。
それに加えて、なぜ間違えたのか失点分析もします。ケアレスミスだったのか、そもそも理解不足だったのかを分析させて、今回のテストから何を学んで、次に繋げるのかということを書かせると生徒たちの思考が深くなります。
実際に面白い現象があって、ある3人の生徒が英語の試験を受けて、51点、103点、114点、という結果でした。普通だと「長文ができていないからそこを頑張れよ」という話になりますが、よく聞いたら大問2問ですごく時間使っていて長文を解く時間がなかったことがわかりました。
そこでその3人を集めて、大問を機械的に16分で区切って解かせたら、同じ難易度の試験なのに51点から81点、103点から154点、114点から148点に上がりました。試験のやり方によってこれだけ数値が変わるのに、先生たちは点数しか見ていないんですよね。
—そこまでの差が出るんですね。
はい、やり方を変えるだけで30点上がったんです。逆に、別の生徒は16分ずつで区切ったことによって大問2が30点から21点に下がりました。そういう結果を受けて、ここを捨ててもここを取った方が点数は高い、というような指導をします。
特に秋からはセンターに向けて、いかに1点でも多く取るか指導をしないといけないと思います。だからこういうやり方を社内で共有していかないといけません。
—予測点や配分を生徒たちに考えさせるというのは今年からの取り組みですか?
そうですね。生徒と会話していると、できる子はだいたい自分が何点くらい取れるか分かっていて、できない子ほど自分の点数が分からない。点数が分かっている子は、自分の力を正確に把握しているからこれからやるべきことも分かっています。
予測点と実際に点数が小さい誤差に収まればいいのですが、例えば30点も合わないとなるとその生徒は多分、基礎力そのものがありません。それから希望的観測を予測点に入れてしまっている部分もあるんでしょうね。
—何を材料に予測点を出すのでしょうか?
今までの積み重ねです。常に振り返りをすることによって、自分の点数が見えてきます。受ける時期によって範囲が変わりますが、去年の履歴が残っています。
過去の先輩たちの振り返りも今の生徒が見えるようにしていて、去年の先輩はここで失敗したというようなことを言えるようにしています。だから、本当にこういうのを積み上げるって重要だとつくづく思います。
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前編では、塾の成り立ちや学習計画の立て方、模試の予測点算出などについてご紹介しました。後編ではStudyplusの活用方法などをを含めてお聞きします。
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