Studyplus for Schoolを活用して、生徒の自宅学習にも好影響を与える|出町アカデミー【Studyplus for School Award 2022】
独自の工夫をこらしながらStudyplusサービスを上手に活用し、新しい教育の在り方に取り組まれている塾・学校を表彰する「Studyplus for School Award 2022」。昨年に続き今年も受賞校によるプレゼンテーションを含むイベントを5月10日から約1ヶ月にわたり開催いたしました。
今回は、個別指導部門でご受賞された「出町アカデミー(京都府)」古川先生のご登壇回を振り返ります。
登壇校紹介
■登壇者
出町アカデミー 教室長 古川先生
京都大学に進学後、3年生の夏に中学3年生の勉強を見る機会を得て、生徒さん本人からの「ありがとうございます」という言葉が心に残り、教育業界へのキャリアへ関心を持つ。大学卒業後、株式会社育星舎へ入社、大学受験を専門とするVキャンパスの専任講師として勤務。1対1指導のVキャンパスから、1対4指導の出町アカデミーへの異動となり、教室長として4年目を迎える。
■出町アカデミーとは
株式会社育星舎グループの個別指導部門。小学生〜高校生を対象に1対4もしくは1対3の個別指導を行う。京都市の上京区に位置し、京都大学や同志社大学の学生講師が活躍。指導方針は、予習を元に、学校の授業をしっかり受けて、塾や学校の宿題を復習として取り組み、演習量をしっかり増やすこと。生徒自身が試行錯誤することを大切にし、どのように問題を解いたのかを生徒が自分で説明できるような指導に取り組む。Studyplus for School導入は中3以上の20名。
HP:https://demachiacademy.jp/
自宅での学習に干渉するツールとしてStudyplus for Schoolを導入
株式会社育星舎が運営する、出町アカデミー教室長の古川です。
Studyplus for Schoolを利用しているのは、中学校3年生以上の20名の生徒です。導入のきっかけは、コロナ禍で自宅学習をフォローしたいと考えたことでした。
育星舎が大切にしている考えは「自立した個を育てる」ことで、出町アカデミーでは特に「学ぶ姿勢を育てる」ことを大切にしています。学ぶ姿勢については、3つの要素に分けて考えています。
1つ目は、正しい姿勢で座ったり、ノートの文字を適切に空けるといった「技能」です。2つ目は、勉強は楽しいという考えや動機付けなどの「態度」。3つ目は、取り組みの続け方や自己管理能力などの「習慣」です。
教科の指導はもちろん、習慣については教室での個別指導だけで完結しません。いかに家庭に干渉していけるかが問題でした。特に緊急事態宣言下で学校の授業もなく、フォローが足りないかもしれないと感じていました。オンライン自習室を設置したり、学年ごとの復習テストを実施したりするのは、非常に大変です。上手くやっていくために、もっといい仕組みがあるのではないかという意識がありました。
また、生徒とのコミュニケーションの不足も課題でした。リモートでは画面を見せるのに手間取ることもあり、教室ではすぐできるはずの確認に時間がかかって、コミュニケーションの絶対量が減っている自覚がありました。また、リモートだとコミュニケーションをとれているつもりで、実はとれていないのではという不安もありました。
さらに、高校生への受験指導にも課題がありました。講師の実力が劣るということはありませんが、受験に向けて安心して取り組んでもらう体制を作るために、もっとできることはあると考えていました。
こういった課題があるなか、Studyplus for Schoolで「自宅での学習にどう干渉するか」という問題を解決したいと考え導入に至りました。また、生徒自身が使い続けるツールとして考えたとき、機能がきちんとしている以上に、ビジュアルが見やすい、使っていてかっこいいとなる要素が大切だと思っています。Studyplus for Schoolは管理画面も見やすいですし、生徒の手元のスマートフォンのビジュアルのよさも、導入を決めた理由の一つです。
タイムラインとカルテで講師が生徒一人ひとりの情報をチェック
次に、講師の1日の動きを説明します。教室長である私は教室の準備から始めて、ダッシュボードで生徒の出欠をチェックしてから、講師配置の確認をします。アナリティクスとタイムラインで生徒の記録をチェックしたら、カルテで指導予定を確認。各講師の先生にも、ダッシュボードやカルテを見て前回の指導内容を確認してもらっています。その後、小テストなどを準備して生徒が来るのを待つ、という流れで準備をします。
スタッフボードは講師の連絡に使用しており、翌日何かするときに忘れないようにメモすることもあります。講師はタイムラインかアナリティクスのどちらかを見てもらい、最低でも宿題ができているかタイムラインの記録でチェックします。カルテは、指導方針(指示書)がトップに来るようにピン止めされている状態です。
講師に目を通してもらうのは、指導方針(指示書)指導の記録です。この記録は「このテストの範囲でやってください」と指示を書いていることもあります。口頭で重要なことは伝えますが、「詳しくはStudyplus for Schoolのカルテを見てください」と言えばすむのは大きな時間の節約になります。
テンプレートには、面談で何を聞くか書いています。また、指導予定として、曜日ごとに誰が来るかを明確にしてスタッフボードにはりつけています。季節講習の説明や、テストが近い生徒の対応など、講師に繰り返し話さなくてはならない事項はここで共有するというルールにしています。運営に必要な作業をStudyplus for Schoolの中である程度は完結させたいと思っています。
生徒の学習記録の仕方として、解いた問題の写真、勉強時間、加えて、できたことや覚えたことをコメントを残すように生徒に伝えています。その日の内容を思い出して振り返るのは記憶の定着に役立つということを話しています。
写真が抜けていたりコメントが雑だったりという点は、講師がチェックします。普段と違う記録になっていたら、「何かあったのかな」と考えて、通塾する当日の会話のきっかけになります。タイムラインでは、Studyplusとデータ連携しているビットキャンパスタッチの学習記録も確認。取り組んだ問題数、学習時間、3段階にわかれたステージのクリア状況をチェックします。
教室帳の私は、タイムラインを見たらコメントでリアクションしています。内容は、生徒のコメントに対する感想が多いです。他にはタイムラインに同じ科目が並んでいたり、コメントが雑だったりする時に次の段階を示すコメントを書きます。「いいね」は講師にお任せです。
こちらは3月30日からの1週間の記録です。この表の、上段ほうにいるグラデーションが赤い生徒は、しっかり勉強記録が付けられているのであまりコメントしなくても大丈夫ですが、記録が途切れたら「昨日は何かあった?」など書き込みます。
中段あたりの、たまに記録が抜けてしまっている生徒には一番リアクションが多くなります。3日連続で記録がついていない生徒は、2日目の段階で「どうしたの」と聞いたり、記録が再開したら「頑張っているね」と書いて、教室に来た時にまた話しかけます。
下段のあまり記録がつけられていない生徒に話すのは、「塾でやっていることが自宅でもできたら力がつくよ」といった内容です。
月末にはアナリティクスの画面を月ごとの表示に切り替えて確認し、各生徒の長期的な傾向をチェックします。
こちらはビットキャンパスとStudyplus for Schoolのランキングです。昨年度から、ほぼ毎月、記録を貼り出すようにしました。
また、生徒のタイムラインなどを見て、必要がある時にはメッセージ機能を使っています。生徒から出欠の連絡や振替相談もメッセージで来ます。リモートでの指導で、教材を共有する時に画像を送ってもらうこともあります。
入り口には入退室の記録をつけるための端末を置き、Studyplus for Schoolと学びエイドの入退室機能を使っています。ここに端末を置くことで、Studyplus for Schoolも学びエイドも塾で必要なアプリだということを生徒に示しています。入り口にはそのほか、スタディプラスが主催する、学習時間を競うS-1グランプリの記録や、学校案内などを貼っています。
指導時間の最後に「振り返り」の時間を必ず設ける
生徒は塾に着いたら入退室の記録をつけ、指導が始まったら前回の指導内容の小テストと宿題チェックし、目標を決めます。宿題チェックはStudyplus for Schoolの記録を見てやっていきたいのですが、まだ記録が徹底できていないので現物をチェックすることも多いです。
指導中はテキストを読んで解答し、答え合わせをしたり、講師の質問に答えたりします。最後に振り返りをして、次回までの宿題と次回の小テストの範囲を決めます。講師は生徒の指導記録をカルテに記入して指導終了です。
振り返りを行うのは、指導最後の約5分間です。記録までが指導という位置づけなので、ここまでを50分でやります。振り返りは長くても10分で終わらせますが、いい加減な記録であれば時間を延長して書いてもらいます。
学習記録と振り返りは、まず紙に記録して、その後Studyplus for Schoolに入力するという手順です。「今日できたことを書いてみよう」など声をかけ、もし手が動かないようなら「今日一番大切な公式は何だった?」などと具体的に促します。
こちらが紙の記録です。振り返りをすることは生徒の記憶を定着するのに重要ですし、講師にとっても生徒の理解度の確認につながります。たくさん書いていても間違った内容になっていることもあるので、赤字で訂正します。
学年が上がれば必ず振り返りが上手くなるということはなく、むしろ高校生の方が振り返りに納得しておらずいい加減になったり、目の前の問題を解くことにいっぱいいっぱいになって、まとめようという意識が低くなったりもします。しかし、生徒自身が「これができた」「これをやった」と自己承認できるという意味でも振り返りは大切です。
生徒によって異なるStudyplus for Schoolの記録
ここから、生徒の事例を紹介します。
1人目は中学3年生の春から通い始めた生徒で、Studyplus for Schoolを使ったのは昨年の12月から2月の3か月間です。
もともとやる気が高く、S-1グランプリをきっかけに記録をつけるようになりました。
この生徒の記録について他の生徒の指導内で話題に上ることが多く、講師も「こんな風に記録してみよう」と話すことができました。それにより他の生徒の巻き込みに成功しただけでなく、本人も周りに負けないように頑張ってくれました。
この生徒には合格体験記も書いてもらったのですが、「スマートフォンに気が向いてしまうけど、勉強の道具として上手く距離感をとることが大切」と書いてくれたのが印象的です。スマートフォンばかり見て困るという保護者からの相談はよくあるので、ツールをうまく使うということを教えるのも塾の仕事かと思います。
こちらは、その生徒の、12月11日から1週間の記録です。もともと数学対策がメインで入塾したので、数学をどのくらいやっているかチェックしていました。振り返りが少ないことが気にはなりましたが、12月はまず時間の維持をしようと話をしていました。
こちらは月ごとの表示です。1月は冬期講習もあって過去問や総復習に取り組んでおり、学習時間は増えたことがわかりました。S-1グランプリの全国ランキングで、100位以内にも入っています。
事例の2人目は、高校1年生の春から卒業まで通塾してくれた生徒です。この生徒は記録の継続が難しく、特に部活が忙しい高校2年生の夏はほとんど記録ができていません。11月にようやく記録できました。塾の外の生徒でStudypluslを使っている友達がいて、その子と頑張ってくれたようです。
タイムラインで流れて来る他の人の学習時間に圧倒されたようで、「あまりアプリを見たくない」と愚痴を言っていました。そこで「学習時間は大切な指標だが、まずは自分の変化を探ったり振り返りをしよう」と話しました。それでもアプリを開きたがらず、教材なしの記録が多かったです。設定については強く言わず、記録を続けてもらうことを大事にしました。
塾にいる日は長時間、自習に取り組んでくれた生徒で、結果から言うと志望校に合格することができました。ただ記録は滞りがちのままで、高校3年生に上がった段階ではほとんど記録なしでした。先ほどの生徒とは周りの影響の受け方が違い、難しかったです。
今思えば、高校2年生の1月、2月の長期休みで学習時間が減ったので、記録の推移を見て褒める回数を増やしたり、滞ってから再度記録をつけてくれたときにもっとリアクションしたりすることができたのかもしれません。
事例の3人目は、今も通っている高校1年生の生徒です。この生徒は積極的で、記録は忘れても宿題はきちんとやっています。成績も良好です。コメントも具体的ですが、簡潔な時もあるので、ムラがなくなるよう指導できればと思っています。
「一緒にいる時は記録ができて、家庭ではあまりできないが、たまにはできる」という生徒は、当塾として目指す学習姿勢を身につけたかどうか、その境界にいる生徒だと考えています。
記録を付けたうえでそれを見て、立て直すという次の段階に進める生徒が増えて、彼らが試験で結果を出せば、他の生徒に身近な例として話しやすいと思います。一方でこれまでの生徒の記録も残っているので、「先輩はこうだった」という話もしていくことを今後はやっていきたいです。
Studyplus for Schoolを通じて講師との意見交換や生徒面談の充実を目指す
当塾の課題として、指導外のフォロー不足がありましたが、自宅と塾をつなぐ窓口をStudyplus for Schoolを使って作ることで対応できました。また、メッセージ機能や「いいね」、コメントを使って、生徒との接触を増やしています。そのリアクションを生徒と講師、講師と講師で共有してコミュニケーションの円滑化に取り組んでいる状況です。
また、高校生への指導については、勉強時間をもとにした学習管理と振り返りの質を上げつつ、しっかりとした授業を提供できれば、指導をさらに手厚いものにしていくことができると考えています。
また、Studyplus for Schoolを活用したことで運営面でも変化が生まれました。1つ目は、教室での実働時間を調整できることです。フィードバックをするタイミングなど、柔軟に設定できます。紙の記録簿だと難しいことですが、Studyplus for Schoolなら授業から数分で生徒にコメントを残すことができます。
2つ目は、生徒の努力を認めてあげる評価項目が増えたことです。声掛けの量だけでなく、種類も増えました。これは、教室で見てわかることだけでなく、学習時間が増加したり、振り返りの内容が具体的になったりしたためです。
3つ目は、数字をもとに話ができるようになったことです。次の課題について「今週は1時間取り組んだから、来週は1時間半できる?」など話すことができます。これにより、評価の質を上げられます。
今後の取り組みとして、まず記録の掲示を継続していきます。毎月の学習時間の合計をランキングで出しているので、これを講師と生徒の間で話題にすることをタスクの1つとしていきたいと思います。
また、振り返りの質を教室全体で上げていきたいです。特に中学3年生に対してどんなことに注目して振り返りをしてほしいか、塾側の要望として話していきます。これが高校進学や大学進学後にも大切な力を養うために必要です。必要性を単に伝えるだけでなく、当塾が大学受験に向けても対応できると示すことにもつなげたいと思います。
講師との十分な意見交換、情報交換にも取り組んでいきます。意見のやり取りには3つあると考えます。1つ目の表面的な情報についてはStudyplus for Schoolを使ってできています。2つ目は講師との直接のやり取りです。データを見て情報共有した中で、どの優先度が高いかを直接話す必要があると考えます。3つ目は、情報の解釈です。勉強時間の増減をどう見るか、どんな風に声がけするかなどの意見交換を、仕組みとして勤務の流れに組み込みます。
さらに、生徒面談も充実させます。特に1対1の面談で、じっくり記録を見る時間を設けたいです。テスト後の振り返りと進路に関する面談はやっていますが、学習記録については指導の合間に話す程度なのが現状です。面談を通じて、普段できているつもりでできていない困りごとの解決や、情報の吸い上げをしていきます。
ここまでをまとめます。Studyplus for Schoolを使って、自宅と塾をつなげる体制をつくりコミュニケーションを増やすことで、塾が抱える問題を解決する道筋をつけることができました。今後は実際の個別指導の中で、本人の記録をもとにした勉強方針や受験戦略を提案し、実践してもらい、それをサポートする仕組みを固めていきます。
Studyplus for Schoolを軸にしつつ、LINEなど生徒が使いやすい他のツールを合わせて適切なフィードバックを行い、今後も勉強に向かう態度や習慣、学ぶ姿勢を育てていきたいです。