「人を育てる」塾のオンライン指導内容と今後の展望|ナカジュク【オンライン指導情報共有会】
新型コロナウィルスの感染拡大により、学習塾業界は教育サービスを提供できず、事業の継続が困難となるリスクが発生しています。これを防ぐために急速に高まっているのが、オンラインでの指導体制の整備の重要性です。
新型コロナウイルス感染拡大の深刻化、そしてオンライン指導に関する事例が少ないことを受けて、Studyplus for School導入校で既にオンライン指導に取り組まれている方々にご協力いただき、オンライン指導に関する情報共有会を開催しています。今回はナカジュクの岩瀬先生と小泉先生にお話を伺いました。
ナカジュクについて
岩瀬:ナカジュクの岩瀬です。今回はナカジュクを手伝ってもらっている、ラボ寺子屋の塾長・小泉先生と一緒にお話させていただきます。まず塾の紹介ですが、ナカジュクは1985年に仲野塾を開校したのが始まりです。そこから教室を少しずつ増やし、私は1998年に学生として入塾し、2002年に職員として入社しました。
現在は東京に3教室、埼玉に4教室あり、対象は年中~高3。先生と生徒1:4の個別指導がメインです。他にも1:2のクラスや受験クラス、小学生向けの英語や速読など、様々なコースがあります。
講師は大学生が多く、ほとんどが卒業生です。大学生が高校生を教えていると、「自分もこうなりたい」という憧れにもなります。小中学生の頃は教室長や私との関係性が強いのですが、高校生になると講師の大学生との繋がりが強くなる傾向です。
1:4で指導するときには、こうしたテーブルを使っています。中央に講師が座り、周りに生徒が4人座るという形です。今はコロナなので、生徒は2人だけ座って真ん中に衝立を立てて使っています。
授業は90分間で、初めにナカジュクTEDというものを3~5分やります。これは何のために勉強するかといったことを講師が伝える時間です。学生講師が話すことが多いですが、たまに生徒が前に立って喋ることもあります。その後諸連絡をして、授業を開始。
授業の終わりにはテンミニッツという、その日の復習のための時間をとっています。ここでは間違えた問題を書いて、それを解きなおすという作業を行います。高校生はこの時間でStudyplusに記録をつけます。うまくいけばプランニングまでできますが、振り返るだけで終わることが多いです。
使用しているツールは上記の通りです。workplaceではいくつかのグループを作って、コロナ対策の話や授業の話などそれぞれわけて情報共有します。Comiruは保護者とのやり取りに使います。生徒管理で使うのはStudyplus for Schoolです。
小泉:教室が点在する中で情報共有をメールでするのは大変ということで、workplaceを導入しました。費用がかからずすぐに情報共有しやすいので、使いやすいです。
岩瀬:次に、ナカジュクがとても大切にしている理念についてご説明します。
今から約15年前、ナカジュクはどんな方向で、どんな会社になっていくかをみんなで考えました。今は、生徒や職員、すべての人にナカジュクに関わってよかったと思ってもらえる会社になることを目指しています。
この理想を実際の行動に落としこんだものがクレドです。これは毎月会議をしながら、「今月はこれをテーマにしよう」と決めています。こうした思いを「人を勝たせる」という社訓にまとめました。内容は本にまとまっていて、職員も生徒も全員これを読んでからナカジュクに入ります。
行動指針としては「カッコいい」という言葉が示されています。自分の行動がカッコいいかどうかで考えれば、理念に沿った行動がしやすいという意味です。私も入社14年目にして、初めて塾長から「カッコ良くなってきたな」と言ってもらえました。この通り、私たちは理念や指針を大切にしています。
「人依存」という課題と解決策
社訓である「人を勝たせる」を実現するポイントは、人を勝たせることに価値を置いた行動をしたとき、その行動が評価されることです。例えば私は教室長ですが、次の教室長を育てると評価されます。つまり、活躍した人よりもそれを育てた人に焦点があたるようになっています。
これは代表の仲野自身が教室を複数持つようになった時、自分と同じ価値観・考え方を持てる社員を育てたかったという思いから始まっています。
私たちは個人の成長が会社の成長だと思っており、膨大な研修を実施しています。日本青少年育成協会の教育コーチングもたくさんやりましたし、木下晴弘さんの「感即動のアビリティトレーニング」にも参加しました。
しかしそれが、人への依存につながりました。どの塾でも、教室が複数になるとシステムに頼るか人に依存するかになっていきます。私たちの場合は、それが後者だったということです。
そういう中で、研修に喜んで参加する社員もいれば、負担になっていく社員も出てきて、自己実現できる社員とそうでない社員に分かれていきました。「教室長はできないし、子どもは好きだったけど、ちょっと仕事を考え直そうかな」という人も現れました。こうした経緯から人材が不足してきたときに、小泉先生にジョインしてもらうことになりました。
小泉:私はまだStudyplus for Schoolを使っている塾が少なかった2017年ごろに、どんな塾でどんな風にStudyplus for Schoolを活用しているかなどを取材していただきました。その記事を読んだ『私塾界』の山田さんとご縁ができ、そこからナカジュクの仲野先生を紹介いただいたんです。
ナカジュクさんが人不足に悩む中、私は同じエリアで塾をしていたこともあって、教室を買わないかと打診されました。ものすごく迷っていろんな方に相談もしたのですが、「やらない後悔はしたくない」と。ただ買取は難しいので、共同運営という形で参加させていただきました。
具体的にどう運営するかを考える中で、うちが使っているICTツールを利用して、人に依存していた部分をカバーできるのではないかと話しました。在籍している生徒の家庭に迷惑もかけずに形を変えられるということで、新しいやり方を始めていきました。
コロナへの対応の流れとオンライン指導の詳細
岩瀬:コロナ禍の対策ですが、3月中は通常通り運営して春期講習も行いました。4月7日に緊急事態宣言が出たので、8日からオンライン指導がスタート。生徒数が少ない教室は授業を行い、多い教室は自習をサポートして4月分の授業は後で振替で行うことにしました。
オンライン授業でも、通常授業と同じくナカジュクTEDから始まります。そこから授業を行い、テンミニッツは省略して授業の振り返りをする流れです。
こちらがオンライン指導での注意点です。まず、通常授業より少ないですが先生1人に対して生徒2.5人が目安となります。
こうした注意点に気をつけつつオンライン指導を進め、17日にはナカジュクの窓という、気軽に話ができる保護者会を開きました。オンライン自習については、下記の通り行いました。
24日にはコロナ禍で収入が減ってしまったご家庭向けに月謝を減免しました。個人的には自分の給料が少し遅れてもどうにかしようと思っていたくらいなのですが、仲野は国の補助金などを上手く使って減免に踏み切ったということで驚きました。
5月1日からはZoomで授業をして、教科書の内容をフォローしていきました。7日からは全教室でオンライン授業ができるようになり、13日からは夏期講習の前倒しで受験対策講座をオンラインで行いました。
受験講座は一日1~5時間目までメニューを設定し、午前中の1~3時間目は無料、4時間目からは授業料をいただきました。この時期は保護者も「なんとか勉強させなきゃ」という思いがあったのか、Comiruで案内しただけで受験生の半分以上が申し込みされました。
20日と23日には中3向けの進学説明会を開き、6月1日から通常通り教室での指導を再開しました。
小泉:ナカジュクは通常、ゴールデンウィークはスタッフ全員お休みです。しかし東京・埼玉で休校になっていたので、ずっと夏休みのようにならない方がいいだろうということで、朝からオンライン自習室を開きました。
今後もオンライン指導は続くことを想定し、ここで生徒と保護者に慣れてもらいたいと思ったんです。オンライン自習室では、講師は4~5人入って、学校の授業で遅れている分を担保する内容です。費用をいただかず、今後授業料をいただくための布石として行いました。
今後のナカジュク
岩瀬:コロナ禍を受け、管理面のICT化を進めました。今、保護者とのやりとりはComiruでほぼ完結しており、細かいところだけ必要に応じて電話でご連絡しています。
うちでは人依存という課題もあるのですが、人を育てるという理念があるので、その点は今後も取り組みたいと思います。しかし、ICTを活用することで異動リスクを減らしていこうと思っています。講師が異動すると生徒が辞めてしまうこともあるので、それは避けていきたいです。
今でも私は前にいた教室の生徒のStudyplusを見て、いいねやコメントをしてます。すると私に直接質問が来ることもあって、教室にいる講師が拾えないこともカバーできます。同じ現象はComiruを介して保護者との間にも起こっているので、必要以上に介入せずに何かあれば対応できる体制は素晴らしいと思います。
また、今年の夏期講習についてですが、そもそも何のために夏期講習を行うのかと考えると、必ずしも夏期講習という形にこだわらなくていいのではという結論に至りました。
オンライン授業については、普段の授業とまったく同じことはできていません。通常授業の方が五感を使えます。しかし、ZoomやYoutubeでの指導にもメリットはあります。
ここの2か月は保護者にとっても勉強が継続できただけで満足だったと思いますが、これからはもっとクオリティが求められるはずです。受験直前でもこのままでいいかというと、充分ではないと思います。ただ、この2か月は本当に私たちにとって大きな財産になったと思います。
コロナ禍で横のつながりを大切にする
岩瀬:先日実施した会議で、塾長の仲野は「教室で授業をするよりも、教室を休みにするよりもみんなは大変な道を選んだ」と言いました。この道は決して塾長一人で決めたわけではなく、みんなで決めてオンラインでのやり方を模索していきました。そういうこともあり、「君たちは大変な道を選んだ。皆さんを誇りに思う」と。本当に嬉しい言葉ですし、オンライン指導を実施した先生方も感じていることではないかと思います。
これから第二波、第三波が来ても、私たちは乗り越えられるはず。まだまだコロナのリスクはありますが、一緒に頑張っていきたいと思います。
小泉:ICTの活用ということでここ数か月Studyplusがフィーチャーされています。私は長く使っているなかで、プロダクトとしてだけでなく、こういった勉強会を開くなどのコミュニティを持って横の繋がりができることが、個人的に素晴らしいと思っています。
今は困難の時ですが、自分たちだけで乗り越えるのではなく繋がりをもって立ち向かいたいです。私もテラコヤイッキューさんと業務提携をしたり、僕はナカジュクと関わりを持たせていただいたりしりして、交流を持っています。
その中で先生たちが「教育って、もうちょっと変えていかないといけないよね」とステップが上がる期間だと思います。日本全体の教育の目線がすごく上がっているので、またさらに階段を一緒に上げていきたいなと思っています。
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