AIにより個別最適化された学びを自動的に提供|すらら【Edtech ONLINE EXPO】
新型コロナウイルス感染拡大により、教育業界においてもDX(デジタルトランスフォーメーション)が加速していることを受け、Studyplus for Schoolでも、「EdTechオンライン展示会」と称して、未来の教育の在り方・先生の新しい働き方に挑戦する教育事業者を広く発信する取り組みを行っています。
今回は、2021年11月に開催した講演の中から、小学生・中学生・高校生を対象とした『すらら』の松本様と、C.schoolの風間先生にお話いただいた内容をご紹介します。
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小学生から高校生までの単元を個別最適化された状態で学べる
松本:株式会社すららネットの松本です。今回は当社の『すらら』の概要と活用方法、実際に教育現場で使われている事例についてご紹介します。
『すらら』は小学校1年生から高校3年生の5科目を学べるICTツールです。12学年分の勉強ができるため、勉強が苦手な生徒は学年をさかのぼって復習することができます。
18万5,000問以上の問題が搭載されており、AIを使って生徒の理解度に合わせて出題されます。また、過去の単元までさかのぼって分かりやすいレクチャーを見れるので、先生がいなくても基本的な部分を理解することが可能です。
紙のドリルをただデジタルドリルに置き換えただけではあまり学習効果はありませんが、『すらら』ではAIを使うことで個別最適化された学習が実現します。日本政府は「学びに向かう力・人間力」「思考力」「判断力」「表現力」を提唱していますが、そのためには粒度の高い個別最適化が必須です。
また、少子高齢化が進む中では、低学年で勉強が得意ではない生徒も塾の生徒として対象にしていかなくてはなりません。そのため、『すらら』は、他社製品がカバーしていない偏差値30台の生徒でも学べるというコンセプトで開発をしています。対応できる学力層が幅広く、基礎学力が不十分な生徒やあまり学校に行けていない生徒にも役立つため、多くの現場にマッチすると思います。
難易度を自動調整するドリルと範囲を簡単に指定できるテストで学力を底上げ
『すらら』の学習フローは、大きく3つにわかれます。1つ目が、レクチャーです。
レクチャーではこのように、アニメーションを使い授業を行います。キャラクターたちが先生となって丁寧に解説し、一方的に授業を聞くスタイルではなく、途中で問題を解いてアウトプットをします。アニメーションにしてゲーミフィケーションの要素を入れることで、継続して利用できますし、聞きっぱなしにならないため集中力が増し、低学力の生徒でも最後まで勉強することができます。
あえてアニメーション教材にしているため、世界観を作ったり吹き替えの必要性が出るため工数もコストもかかります。しかし、それでも勉強が苦手な子にもしっかりアプローチしたいという想いがあるため、この点にはこだわっています。
キャラクターの先生の声にもこだわり、上記のような作品に出演されている方を起用しています。ナレーターや機械音声では無味乾燥になるため、人気アニメに出ている方にご協力いただいています。
『すらら』の学習フローの2つ目は、ドリルです。ドリルには、いくつかの機能がありますが、ここでは2つご紹介します。まず、難易度コントロール機能です。生徒の理解度にあわせて自動的に問題の難易度を変え、個々の生徒にちょうどいい難易度の問題に取り組ませることができます。
基本的に4択形式などは用いず、ドラッグアンドドロップや全文入力形式など豊富な解答形式を用意しています。初めに中易度の問題を出し、正解すると難易度が高まり、間違えるとヒントを与え、それでもできなかった場合には難易度が下がる仕組みです。
これにより個別最適化ができ、生徒によってクリアするまでの総問題数や問題内容は異なります。
次にご紹介するのは、つまずき分析機能です。『すらら』では直近の学習内容で問われている公式・法則だけではなく、幅広い既習範囲にわたって理解度を確認し、正答できない原因を判定します。
例えば、中学生が一次方程式の問題を解くには、速さの計算、方程式を立てる力、方程式を解く力、単位の計算の知識が必要です。もし、速さの計算でつまづいているようであれば、小学校の範囲に戻り、速さの計算について学びなおし、また元の問題に戻るということができます。
『すらら』の学習フローの3つ目は、テストです。単元が終わった時や月例テストをしたい時、テストシステムを利用できます。テスト時間を5分〜90分の間で設定し、生徒と先生がテスト範囲を選ぶと、それだけで簡単に問題が作成されます。
今年から教科書が改訂されましたが、主要な公立の教科書は対応済みです。教科書を選んでテスト範囲を指定すれば、定期テスト対策の問題が自動的に表示されます。テストが終わるとすぐに結果が出て、復習のためにどこを勉強すればいいかが分かります。そこで指定された部分をレクチャーやドリルで復習し、またテストを受ける繰り替えしをすることで成績向上につながります。
『すらら』の導入で多くの業務が自動化⇒生徒とのコミュニケーション増
風間:C.schoolの風間です。ここからは、『すらら』を導入している学習塾が実際にどのように活用しているかをご紹介します。
私は学生時代に個別指導塾で講師を務め、卒業後は学校の教員をしていました。そこでさまざまな経験をし、より良い教育環境を模索して3年前に当塾を設立。場所は東京都江戸川区平井で、生徒数は約70人です。講師は3人がフルタイムで働いており、パートタイムの学生講師もいます。
コンセプトは、「なりたい自分に出会える塾」です。生徒にはやりきる力をしっかり身に付け、つらいことも乗り越えて、なりたい自分になってほしいと思っています。
当塾は、iPadで『すらら』を使い、分からないところは質問するという自立型形式です。中学3年生は一部、紙教材も併用しています。生徒とはできるだけ多くコミュニケーションを取り、本人たちが「これを頑張りたい」など言葉にできるよう、学習の後に振り返りをしたり、頻繁に個別面談をしたりしています。
『すらら』導入のきっかけは、教員時代の経験です。私は教員時代、生徒の学力差がある中で、全員にフィットした授業を届けることの難しさを感じていました。また、授業を作る度に「もっといい教材があるのでは」という気持ちも募っていきました。そこで、無料で使える教材を取り入れ、学校のパソコン室で使って授業をしていました。
こうした工夫により、生徒は個別最適化された勉強ができ、英語の偏差値が上昇。さらに、コミュニケーションを取る時間が増えました。この成功体験があったため、塾を設立してからも、ICT教材に興味があり、『すらら』を導入しました。
数ある中から『すらら』を選んだ理由は、人でなくてもできる作業を自動化できると思ったことです。また、教科書に対応しているICT教材も少なく、『すらら』なら定期テストでの点数アップなど成功体験を積ませてあげられると感じました。
また、導入前にすでに『すらら』を使っている塾の見学に行き、小学生たちが楽しそうに使っている様子を見て安心できました。さらに、私以外の講師にとっても扱いやすい設計だったこともポイントです。
『すらら』の最大のメリットは、授業で教える時間がなくなり、その分、生徒の「人生のサポーター」として有意義な時間を使えるようになることです。また、前述の通り、多くの作業を自動化できます。教員時代は授業作りからテスト作り、採点、分析、個別の復習指示をやる必要があり、ほとんど休みがありませんでした。しかし、『すらら』導入により、これらのほとんどが自動化されました。
授業から再テストまで自動化できる上に、データログの活用ができるので、機械的な作業ではなく「人だからこそできること」に集中できます。実際に、当塾ではフルタイム講師3人と「生徒に何を届けたいのか」を議論していますが、日々のコミュニケーションを大切にしたり、学習ログをチェックして一人ひとりにあったサポートをしたり、振り返りシートに毎日コメントを書いて熱量を伝えたりすることができています。
『すらら』は、三者面談でも役立つツールです。当塾では、1学期に1回面談を行っていますが、学習の成果やプロセスを具体的に説明するときに、『すらら』のデータを見せています。事実に基づいたうえで、「こういう課題があるので、次の講習ではここをやりましょう」「次の学期に向けてはこういうことを勉強しましょう、そうすればこれぐらい未来が期待できます」といったことを話します。あいまいな内容ではなく、学習プロセスが可視化されることで、より納得感を持ってもらうことができます。
生徒のログから復習指示など的確に行う
次に、具体的にどのように『すらら』を活用しているか解説します。『すらら』の単元と学校の教科書がひも付いているので、これらを生徒たちのiPad上で、『すらら』のシステムとして設定します。授業作りも簡単で、勉強したい箇所をドラッグするだけで完了。小テストも、教科書の範囲を決めて該当ページ数を入力すれば、すぐに単元ごとのテストができます。
テスト作りは、やり方さえ教えれば生徒たちが自分で作成することも可能です。最初は一緒にやっていますが、何度も見せていると覚えてくれます。そこまでできるようになった生徒は、しっかりと成績も伸びています。
採点は全自動で、成績が表示されて正答率に合わせて復習指示を出すことができます。例えば、80パーセント以下のユニットは復習するといった設定も可能です。
生徒がどんな問題を間違えたかが分かるので、その理由を分析して「問題文はちゃんと読もう」と声掛けをしたり、帰り際にそこだけを出題してもう一度理解してもらったりと、ピンポイントでの学習指導ができます。
生徒が塾に来る前にデータを見ておくと、密度の高い指導ができることもメリットです。個々の課題特定の準備に時間が使えるようになったのは本当に大きな変化です。
休校によるオンライン指導でも『すらら』で学習習慣を築く
新型コロナウイルスによる休校に伴い、当塾でもオンライン学習に対応しました。塾には、環境の価値、学習コンテンツの価値、人の価値があります。学習コンテンツの価値については、ZoomやICTツールを使って実現できると考えました。
また、外出できない中でも人の価値を届けたく、Studyplus for SchoolやZoom、LINEなどを使って、生徒とコミュニケーションを深めました。生徒は家で『すらら』を使い、週2回Zoomで個別指導を受けるという流れです。また、特に小学生はアニメーションで面白いと感じているので、家でも進んでやってくれます。
『すらら』を使って勉強したデータは管理者に送られてくるので、気づきがあればLINEなどで聞いたり、生徒から質問が来たりしていました。普段はレポートなど送っていなかったのですが、オンライン期間は、『すらら』でどのくらいユニットを進めたかと、日々の情報をコメントして2週間に1回のぺースで保護者に送りました。
オンライン指導で『すらら』が使いやすい理由は、学習ログが細かく出て、どこを重点的に勉強するかZoomなどですぐに指示できることです。問題集を1ページずつめくってどこを間違えているか見つける必要はありません。
授業料は通塾時と全く同じ価格です。今回オンラインでの対応が確立できたことで、今後また何かあっても、同じように対応することが可能になりました。
実際に、初めのうちは「本当にiPadで勉強できるのか」と不安に思う方もいましたが、8カ月ほど使うと「本当に良かった」と言っていただけています。オンライン指導の結果として、7割の生徒の学力が上がっています。残りの3割の生徒はマインドを変えられなかったことが問題点で、これは『すらら』の課題ではなく講師の課題です。
成績が上がった生徒の詳細を見てみると、まず数学はICTツールによって非常に点が上がりやすいことが分かりました。入塾した時はテストの点数が60点ぐらいだった生徒は、数か月で80点になり、その後94点を取って学年1位になりました。
定期テスト対策には学校のワークと『すらら』が重要で、私の役割はそれらをやりきるまで伴走することです。生徒が自走するまで付き添っています。
成績UPの本質は『正しいやり方での必要な学習量の確保』
ICTツールは、あくまでも手段です。学習塾の本質は変わらず、生徒の学習意欲をしっかり育み、正しい学習プロセスで進めることが大事だと思います。また、やりきる覚悟が大切で、その気持ちがないと手段を変えても成績は上がりません。一度選んだ教材を使いぬくという思いで、信じてやりきることが大切です。
今、『すらら』のテストを繰り返した数と成績の相関を取ろうと思い、データ分析しています。実際に何度も解いた生徒の成績が上がっているため、このデータを生徒に見せながら話しています。
勉強ができるようになる本質は「正しいやり方で必要な学習量を確保すること」で、これはいつの時代も変わりません。教材はあくまで手段なので、これからも『すらら』などの教材を使いながら、生徒たちと一緒に走っていきたいと思います。