学習記録をデジタル化し、教員の負担を軽減しながら生徒とのコミュニケーションを充実|桜花学園高等学校【Studyplus for School Award 2021】
Studyplus for School Award 2021とは、少子化・採用難・地域格差という社会課題が広がる中で、未来の教育の在り方・先生の新しい働き方に果敢に挑戦する教育機関を表彰するものです。
昨年に続き今年も、受賞校によるプレゼンテーションを含むイベントをオンラインで開催いたしました。その模様をnoteでもお伝えしていきます。
今回ご紹介するのは、学校部門で受賞された、桜花学園高等学校(愛知県)の水谷先生の回です。
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生徒の学習記録をデジタル化し教員の負担を軽減
本校は「心豊かで気品に富み、洗練された近代女性の育成」を建学の精神に、1923年に設立されました。現在、生徒は1学年350人程度おり、教職員は「教育に親切たれ」というモットーに基づいて教育活動を行っています。
昨年度の進学実績は国公立大学が19名、私立大学が267名です。進学した生徒の他、バスケットボール選手として就職した生徒もいます。
本校はコース制を取り入れており、部活に力を入れるコース、一般受験で難関大学を目指していく特進コースや理数コース、保育士を目指す保育コースがあります。ICT教育の一環として、高校3年生は特進コースと理数コースの生徒に、高校1~2年生は全員に1人1台iPadを配布しています。利用しているサービスは、Google for EducationやCYBER CAMPUS、すららなどです。
本校では以前、「学習の記録」という冊子に生徒の学習記録をつけていました。記入するのは学習した内容と時間、1週間の振り返りのコメント、テスト前の目標や反省を書く欄などです。担任は毎日これを回収し、シールやスタンプでリアクションし、週末にはコメントを書きます。これは、担任にとって負担の大きい業務でした。
管理職としては学習の記録を継続したい一方、負担を軽減したいという想いもありました。そんな中でiPadの導入が決まり、学習の記録をデジタル化することになりました。様々なアプリがあるなかで、生徒から教えてもらったものがStudyplusです。日々の学習の記録、1週間の振り返り、テストの振り返り、長期休暇中の学習計画、英検や漢検ので検定取得の確認など、本校で必要な項目が満たされていたため、まず私自身が記録をつけ始めることにしました。
実際に使ってみると、勉強時間がカラフルなグラフで表示され、どれだけ勉強したのかが一目でわかり、過去にアナログで生徒の学習分析などにチャレンジして挫折していたことが、アプリ上で簡単にできると驚きました。また、テストまでのカウントダウン機能があったり、生徒同士でフォローし合い勉強時間を競って学ぶ環境がつくれたりとメリットも多く、非常によいアプリだと感動しました。
トライアル期間中、生徒から「先生のコメント励みになるし、嬉しい」と言ってもらたことがとても印象的です。アプリを通じて生徒は、学習スタイルを確立することはもちろん、教員からのメッセージを求めていることがわかり、Studyplus for Schoolの正式導入を決めました。
授業時間を使い操作方法をフォロー
Studyplus for Schoolの導入は、特進コースの1年生2クラスから始めました。生徒をiPadの操作に慣れさせる必要もあったため、自分でやってもらうのではなく、朝のホームルームで前日の記録を入力させました。
記録の付け方については、タイマーよりストップウォッチを勧めています。後から記録すると、まとまった時間ばかりになりますが、ストップウォッチにすれば分刻みで記録が付けることができ、勉強している本当の時間がわかります。
そして1週間の振り返りとして、週の学習時間の合計と反省をメッセージで送ってもらい、テストがあればその振り返りもしました。運用は担任に一任しましたが、こまめに対応してくれたため順調に運用できました。
一方、メッセージのやり取りが負担というデメリットもありました。また、担任以外の教員は使用方法をほとんど理解しておらず、一部のクラスでは「記録を付けなかったら掃除当番」といったペナルティを課してしまう運用がされていたことも残念な点です。
導入2年目は、生徒たちも操作に慣れ、自分でどんどん入力ができるようになりました。数日記録がなければメッセージを促すこともありましたが、基本的には学習のアドバイスや精神的なサポートをメインにしました。
こちらは、生徒と教員の実際のやり取りです。生徒からの質問を受け、担任が教科担当の教員に質問するなどして運用しました。
また、2年目は新たに入学してきた新1年生のクラスにも導入しました。10クラスで363人が利用を始めたこともあり、担任に一任せず学年主任が中心となり全体で取り組む体制を作りました。
生徒にはStudyplus for Schoolのアプリをインストールした状態のiPadを配布し、オリエンテーションで学校連携をさせ、入力方法のレクチャーは動画で配信しました。私は情報の授業を担当していたので、そこでも入力方法などをフォローし、総合的な探究の授業でプランニング機能について教えました。
情報の授業では教材登録の方法やメッセージの送り方など、10分~15分程度の時間で指導しました。今振り返ると、授業中にその場で取り組ませることができたのはポイントだったと思います。自主的にやるように言ってもなかなか取り組んでもらえないため、学校で一緒に操作する時間を設けることが大切です。
総合的な探究の時間では、テストの前にレクチャー動画を配信し、テスト勉強の計画を立てました。
導入2年目の反省としては、生徒にカテゴリーの登録をしてもらったのですが、カテゴリーを細かくしすぎたり、逆に大雑把になってしまったりと、うまく使えない生徒がいたことです。そこで今年度は、学校でカテゴリーを指定するようにしました。
また、休校により学習に対するモチベーションが下がったり、学校生活が不安になってしまった生徒もいましたが、担任と学習について毎週やりとりをすることが心の支えとなったようです。
学年全体を見ると、前年度よりも操作に慣れて自主的に記録する習慣がつきました。1年生については、10クラスに導入したこともあり、管理者の私が全クラスについて把握しきれませんでした。その一方、学年全体で取り組めたことは大きな成果でもあります。
研修を通して教員のスキルアップを図る
現在は導入3年前の目標として、教員のICTスキルアップを目指しています。これまでも段階的に上達しており、たとえば導入した直後は「いいね」をするところから始めたのですが、慣れてきた頃に生徒とメッセージのやり取りをするようステップアップしていきました。内容がいつもテンプレートのようになってしまうという相談をもらってからは、スタンプのように送れる画像を用意し、それを使用してもらいながらコミュニケーションをとる工夫もしています。
特に今年は、高校1年生10クラス、高校2年生11クラス、高校3年生3クラスと利用する生徒が増え、その分運用する教員も増えているため、今までより多く研修していく予定です。
すでに実行したものの一例としては、年度が始まる前の春休み、基本的なGoogleのサービスやiPadの使い方が分からない先生を中心にGrow with Googleというオンライン研修を受けてもらいました。今後も、校内でiPad研修や情報モラル研修を開いていきます。
メッセージについては、担任と生徒が送りあうことで、生徒が個人的な家庭の事情を相談できて距離が近くなるというメリットが生まれています。対面では話しにくい生徒も、オンラインではたくさん話してくれるようになりました。
なかなか学校に来られない生徒ともコミュニケーションを取ることができ、電話では何も話さない子も、オンラインなら悩みを相談してくれることもあります。それがきっかけで学校に来てくれるようになったケースもありました。
一方、学習記録を教科担任と共有しにくい点も課題です。特に特進コースの教員からは「メッセージのやり取りはクラスの生徒とだけしたいが、学習の様子については教科担当の教員にも見てもらい、アドバイスしてほしい」という声も出ています。
さらに高校3年生については、受験対策に効果的な学習支援を、Studyplus for Schoolを通じて行っていきたいと考えています。3年間の学習ログが蓄積できたため、ログに対する進路実績などを整理し来年度以降の進路指導に活かすデータを作っていきたいと思っています。
生徒とのコミュニケーションや勉強時間向上に寄与する
これまでの本校におけるStudyplus for Schoolの活用を振り返ると、4つのポイントがあります。
1つ目は、クラスのプラットフォームとしてStudyplus for Schoolが確立してきたことです。学習記録を入力するだけではなく、学校生活の悩みを生徒が相談でき、毎週のメッセージのやり取りで距離が近くなっています。
2つ目は、生徒のStudyplus for School活用が年々うまくなっていることです。3年前の新入生より、今年の新入生の方がより早い段階で慣れるようになってきました。
3つ目は、教員への研修の必要性です。より効果的にStudyplus for Schoolを活用するため、情報モラルやスキルについての研修は今後も引き続き行っていきます。
4つ目は、Studyplus for Schoolの2つの側面についてです。本校ではコミュニケーションツールとしての側面が大きいですが、特進コースの生徒に対しては学力をつけるためのアプリとして活用している面もあります。Studyplus for Schoolをどういった形で活用していくのか、使い方をより確立していきたいです。
また、スタディプラスが主催する学習週間の定着を図るS-1グランプリもうまく活用することができています。生徒はチームを作って登録をしたり、目標を入力して担任に宣言したりしています。S-1グランプリが始まると入力率が大きく上がるため、今後も参加していきたいです。
Studyplus for Schoolを使うと、生徒は家にいても学校に来ているような感覚になるようです。友達に「今から一緒に勉強しよう」と誘い、学習記録をつけ始めるといった活用も見られています。コロナ禍でメンタル面も大変な時でしたが、家にいても一人じゃないという実感をもって勉強に取り組めたことが、非常に印象的でした。
Studyplus for Schoolのメリットは多数あるので、これからも学年全体を通してしっかり活用していきたいです。