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宮古島から次世代を育てる。その志の根にStudyplus|個別進学塾Root【Studyplus for School Award 2022】

独自の工夫をこらしながらStudyplusサービスを上手に活用し、新しい教育の在り方に取り組まれている塾・学校を表彰する「Studyplus for School Award 2022」。昨年に続き今年も受賞校によるプレゼンテーションを含むイベントを5月10日から約1ヶ月にわたり開催いたしました。

今回は、自立指導部門でご受賞された「個別進学塾Root(沖縄県)」根間玄隆先生のご登壇回を振り返ります。

登壇校紹介

■登壇者

個別進学塾Root 代表
根間 玄隆 先生

■個別進学塾Rootとは

沖縄本島から南に300kmの宮古島に位置する。主に中3から高3を対象に自立型学習を目指して運営。Rootは「生徒の夢や志の根っこを伸ばす」と教室長の名前「根間」が由来。職業や仕事について知る機会の少ない離島のため、キャリア教育に力を入れているのが特徴。
HP:https://root-kobetsu.com/

Z世代にこそ必要な「コーチング」と「面談の時間」

私たちの塾では、生徒の考えや夢を引き出していく「コーチング」にかなり力を入れています。コーチングの重要性はここ数年で見直されてきました。その背景には、世代によって考え方や普段の行動が変わってきた影響もあるのかなと思っています。もちろん生徒は一人ひとり個性があって違うので、「世代」としてひとくくりにしてしまうのは乱暴でもあるんですが、このような考え方も面白いんじゃなかなと思い、あえて世代で分けて説明させていただきます。

◆各世代の特徴

・X世代:1965年-1979年生まれ(現在40-54歳)
大人になってからテクノロジーが台頭した世代。バブル景気を楽しんだ名残か、最も購買力が高い。テレビや新聞が主な情報源である反面、SNSなども場面に分けて使う。

・ミレニアル世代:1980年-1995年生まれ(現在25-39歳)
テクノロジーの台頭を目の当たりにしてきた世代。就職氷河期やテクノロジーによる変革を目の当たりにし、モノの所有にこだわらず堅実に生きようとする。

・Z世代:1996年-2015年生まれ(現在5-24歳)
スマートフォンやSNSを当たり前のように使いこなすデジタルネイティブ。インターネットを介して自分の考えを発信したり、人脈を広げたり、他の世代にはないネットの使い方をする。

僕は「ミレニアル世代」でして、手元にパソコンや携帯があるのが普通の時代。バブルが終わって、失われた30年というのをど真ん中で生きてきた世代ですね。そして、今の高校生は「Z世代」に当たります。Z世代は、2008年リーマンショックがあり、2011年東日本大震災があり、YouTuberという新しい職業が出てきて、新型コロナウイルスでみんなの生活が大きく変わった状況でした。このように、今あるものが当たり前ではないような変化の激しい中で生きてきた世代かなと思います。

そんなZ世代の特徴が2つありまして、それが「多面性」「つまみ食い」です。
「多面性」とは、一人で複数の顔をもつということ。ひと昔前は家庭に電話は一つで、家族みんなで共有していましたよね。そのように、ひとつのものを複数人で共有するという時代がありました。そこから携帯電話を一人1台もつようになり、さらに進んで今何が起きているかというと、一人で複数のSNSアカウントや複数の顔もつというのが当たり前になってきました。つまり、学校の顔、Twitter上の顔、もしかしたら塾の顔も生徒は持っているかもしれないということです。
続いて「つまみ食い」とは、固執しない、やってみてダメなら次にいくということ。TikTokがまさにそうですよね。どんどん流れていくものの中で、必ずこの動画を最後まで観なきゃいけないというわけではなく、やってみてダメなら次、やってみてダメなら次、というように、どんどん試して自分に合うのを探していきます。

少し前の時代だったら、いい大学に行って、いい就職をして、いい家庭を持って……と、みんなその事例にのっかるのがいいとされていて、同じ理由で頑張ることができていました。しかし、今はもうそうじゃない。選択肢や情報が溢れている時代ですので、「あなたたちのやるべきことはこれ」と仮に先生側が押し付けたとしても、みんな同じ理由では頑張れないというのが、Z世代の子たちなのかなと思います

こちらから「あなたは、こういうことがやりたいんじゃないの?」と言い当てることは、ほぼ不可能です。そのため、生徒がやりたいことを引き出す「コーチング」という技術が必要になってきます。こちらから決めることも、いい・悪いの評価もしません。生徒の話をしっかり聞くために、私たちの塾では面談の時間を最大限取るということを常に意識しています。先生と生徒2対1の週間面談に加えて、1対1の個人面談を不定期で必要な時に実施しています。

また、生徒に自分自身で行動でき、変化に強く、生き抜ける人材になってもらうために、私たちの塾では4つのことをやめました

まずは、映像授業と参考書を中心にすることで「5科目の授業」をやめました。また、「今このくらい進んだからあとこのくらい勉強をしようね」といった先生側からの「管理」もやめました。さらに、志望大学や目標点などを塾側が一方的に「決定」することもやめました。そして、叱られて行動を変えるのではなく自ら気づけるようになってほしいので「叱責」することもやめました。

「YWTフォーマット」の導入と「面談」の成功基準

Studyplusでの記録をはじめてから起きたのが、生徒からすると「何を書いていいのかわからない」ということでした。最初は僕らも探り探りで、「記録をつけましょうね」と言うだけで出来たらOKだったんですが、ただ時間を記録するだけになっていき、結局面談時に「どこまでやったの?」と聞くことになりましたし、生徒も「どこまでやったっけ……?」となっていました。記録はしていても定着や把握はしてないという状況で、これはあまりよくないなと思いました。

そこでひとつ導入したのが、「YWTフォーマット」です。Yはやったこと、Wはわかったこと、Tは次やることを意味しています。何かのビジネスセミナーで習ったフォーマットだったんですが、これを元にStudyplusを投稿してもらうといいのではということで導入しました。実際の記録はこんな感じです。

気を付けることとしては、Y(=やったこと)には必ず “数字”を入れること、T(=次やること)にはこの教材を使用して次にどこから始めるのかを書いてもらうことです。

やってみて一番よかったのは、T(=次やること)の部分でした。次にやることまで把握しておくことで、生徒が今やったことと次にやることがぶつ切りにならず、計画を立てるときにスムーズになりました。生徒も改めてその教材をやるぞ! となったときにも、どこから始めればいいのかがすぐにわかるので、勉強への入りがスムーズになりましたね。

もちろん、W(=わかったこと)が一言しか書いてないような子もいますが、そのときは、書いてない背景を面談で聞いています。ただ面倒で書いてないということもあれば、何を書いていいのかわからないということもあるんです。その場合は、例えば「教材の中のタイトルになっている単元名を書いてみよう」とか「気づいたことを書いてみよう」など、書く内容の事例についてアドバイスしています。
YWT導入前後で、記録率自体にはあまり影響はなかったのですが、生徒自身が振り返りから気づきを得て、Studyplusに記録する意味がやっとわかってきたという感じでした。

これらの記録をもとに週1回面談をしていますが、そのときは「問題提起」に走りすぎないことが大切です。「コーチング」と「カウンセリング」は似て非なるものなんですよね。よく聞きがちな質問として「なんでできなかったと思う?」「なにか困っていることない?」といったものがあるかと思います。実際、僕自身も最初はそういった質問をしていました。生徒の課題や困っていることを解決するのが、面談だと思っていたんです。

しかし今は、できていなかった部分よりも「できている部分」に注目して、今後もっとよくしていくためにはどうすればいいか、次の目標をもっとおおげさに叶えるにはどうしたらいいか、という質問を投げかけています。そうすることで、今まで生徒自身が思っていた目標よりも、少し高い目標を立てられ、それに向かって頑張ることができます。これを繰り返していくうちに、少しずつ自分のやりたいことが大きくなっていくんです。もしかしたらできないかもなぁというところまで引き上げられると、面談としては成功だなと思っています。

Studyplusがあるから伝わる、全国レベルの戦い

Studyplusを定着させるため、Studyplus for Schoolを導入してすぐに「S-1グランプリ」に参加しましたが、想像以上に生徒から反響がありました。生徒の声をひとつご紹介します。

このような声もあり、さっそくやってよかったと思いましたね。自分たちの成果を見ることもできますし、全国の同年代の子たちがどのくらい勉強をやっているのか、他と比べて足りているのかどうかがわかるので、すごくいい取り組みだなぁと思いました。
宮古島の中だけだと、進学校もひとつですし、周りで勉強している子も半分知り合いのような子ばかり。S-1グランプリを活用することで、受験は全国の戦いなんだよ! というのが、リアリティを持って伝えることができているのかなと思います。

また、宮古島には大学がないので、大学生がいません。一度みんな島を出るので、若い方があまりいなんです。そうなると、身近に勉強を教えてくれる先輩もほとんどいない状態なんですね。コーチングの時間や週1の面談にStudyplusを導入することで、生徒自身が自分の行動に気づき、他人がどうやってるのかを見える化できるのは、すごくいい点です。

塾も、大学生講師を探すのがほぼ不可能な中で結果を出さないといけません。宮古島の人口もどんどん減ってきていて、今まさに働き盛りという世代がいない状態です。このような課題を抱えた中で、宮古島が今の良さを残しつつ、持続的に生活が続けられる環境を残しながら、よりよく発展していくためには、やはり人材育成が大事だと感じます。ハンデがある環境の中で、どうしても生徒を育てたいと思ったとき、先生が直接教えない、人に寄らないシステムが絶対に必要だと思って、試行錯誤しています。その中で、昨年から導入したStudyplus for Schoolというのは、いま塾運営のシステムの中で必要不可欠なものとして入り込んできています。

僕らから見えている世界は宮古島ですが、おそらく全国の教育に携わるみなさんのお仕事も、5年後・10年後に社会に出て活躍される生徒を育てるという、とてもかけがえのない仕事だと思っています。僕自身もたくさん勉強させていただきながら、共に頑張れたらうれしいなと思います。