オンライン指導を通してなりたい自分になる方法を伝える|C.school 【オンライン指導情報共有会】
新型コロナウィルスの感染拡大により、学習塾業界は教育サービスを提供できず、事業の継続が困難となるリスクが発生しています。これを防ぐために急速に高まっているのが、オンラインでの指導体制の整備の重要性です。
新型コロナウイルス感染拡大の深刻化、そしてオンライン指導に関する事例が少ないことを受けて、Studyplus for School導入校で既にオンライン指導に取り組まれている方々にご協力いただき、オンライン指導に関する情報共有会を開催しています。今回はC.schoolの風間先生にお話を伺いました。
C.schoolについて
C.schoolの風間です。私は大学時代に大手個別指導塾に勤務したあと、オンライン英会話の会社でセブ島にてサービスオペレーションの仕事をしました。また、中学校の教員としても働いていた経験もあります。その後、公立の子どもたちに主体的に進路選択をしてもらいたいという思いで、地元・江戸川区平井に塾を開きました。
C.schoolではEdtechをフルで活用し、自立型の学習をしています。また、なりたい自分を引き出すためにコミュニケーションを重視した対話型であるというのも特徴です。私ともう一人の人間で運営しているのですが、彼はNTTコミュニケーションズでEdtechを扱っていて、技術の知識や現場の知見もあります。
使用している教材はすららとモノグサ、その他受験用の問題集を使っています。利用しているICTツールはStudyplus for School、LINE@、G suiteです。
私たちのビジョン、ミッション、バリューは上記の通りです。「Be who you want to be. Create your own future.」ということで、なりたい自分であろう、自分の未来は自分で切り開こうというコンセプトでやっています。そんな私たちが中間ゴールとして目指しているのは、生徒たちが本当に行きたいと思える学校を見つけて、そのために学力向上をしているという状態を作ることです。
生徒たちが大人になった時、人生で仕事や色々なことがあるなかで、自分自身はどうなりたいのかを考え、そこに向かうステップを見つけて、自分を信じてやり切っていくというプロセスが重要です。私自身、中学、高校、大学となんとなく進学してしまった経験があるので、生徒たちにはそうしたステップを主体的に考え、なりたい自分に向かって歩んでいけるような中学・高校生活を送ってほしいという思いでサポートをしています。
オンライン指導開始までの流れ
新型コロナ感染症が広がる中で、私たちはC.schoolの価値をオンラインでどう提供していくか考えるため、教室を持つ学習塾にはどんな価値があったのかを整理しました。
その答えの一つ目が、学習環境の価値です。生徒たちは勉強できる場所を求めているので、「塾に行けば集中できる」こと、さらにハード面ではiPadなどの環境が整っていることに意味があると思いました。
二つ目の答えが、学習コンテンツの価値です。無数にあるコンテンツの中から自分で選ぶというのはなかなか大変なので、子どもたちにカスタマイズした教材を届けていくことに価値があると思います。
三つ目が人の価値です。人が教えることで、生徒と信頼関係を築くことができます。そのなかでどうやって学習計画を立てていくべきか、一人ひとりが何につまずいているのかなど把握しながらアドバイスができることに、価値があります。
この三つを踏まえて、自分たちがなぜオンライン指導をするか考えたとき、生徒たちがなりたい自分になるために、人にしかできないことを届けたいと思いました。一人ひとりの人生に寄り添ってエンパワリングしたいし、一人ひとりの状況にあった学習サポートをしていきたい。だから環境が変わったとしても、オンラインで指導するべきだという結論に至ったのです。
オンライン指導のオペレーション
4月7日に緊急事態宣言が出たので、その日に保護者に通塾の継続のアンケートとオンライン化の案内を送りました。全員継続ということで、翌日に一人ひとりと面談して、週末にオペレーションを整え、12日からオンライン授業を開始したという流れです。
オンライン指導を始める直前に生徒と1時間ずつ面談をしたのですが、そこではこれから迎える一か月間の意味を話すのと同時に、ツールの使い方も復習しました。うちではICTツールを色々使っていたので、学習コンテンツの価値はそのままオンラインでも変わりなく提供できていると思います。
学習環境はなかなかそのまま提供はできないのですが、代わりにZoomを使っています。教室では120分で15人見ていたところ、今は40分でマンツーマンの指導をするように変えました。Keynoteに問題を貼り付けて、そこにアップルペンシルで書き込みながら教えるという流れです。
生徒はモノグサとすららを主に使っていて、塾からは家に端末がない場合に限りiPadを貸し出しています。メッセージはStudyplusを使っているのですが、中1だとまだ慣れない生徒もいるので、LINEを使うこともあります。
授業内容もスタプラの利用も、基本的には塾でやっていたことをそのまま自宅でやっているだけなので問題はありませんでした。実際にオンライン指導を始めてから、中3生の勉強時間は実は徐々に増え、週平均25時間くらいです。これが多いのか少ないのかは判断しかねますが、頑張ってやってくれているなというのは感じられます。
オンラインで質が落ちるのではと思ったこともありましたが、カバーできています。例えば今までは手書きにこだわっていて、学習ノートに直接コメントを書き込んでいました。オンラインでこれがどうなるかと思いましたが、生徒にノートを写真で送ってもらってアップルペンシルで書き込んでいるので問題ありません。
また、模試もオンラインでできました。問題用紙は生徒の家にポスティングしたのですが、塾は家庭訪問がないのでどんなところに住んでいるのかなど見られてよかったです。当日はZoomで繋いで試験を行い、リスニングも音声を流してできました。現代のテクノロジーで、デジタル化できないものはあまりないと思います。
授業頻度は、小学生は週1回で中学生は週2回です。月謝は、中学生は基本的に前のままなので変えておらず、小学生は週1回に変更したのでそれに合わせて下げています。小学生は実際にやってみてオンラインだと難しいところもあったので、5月からは「すららだけにしませんか?」という提案をしました。
最初から丁寧にコミュニケーションをとったからか、休塾したいという生徒はいませんでした。「教室で提供してきた価値がオンラインになっても変わらず提供できるので、心配しないでください」と、保護者の方に伝えられたからだと思います。
EdTechを塾で利用する意義とStudyplusの使い方
私がEdTechを重要視してICTツールをどんどん使っているのは、人がやる必要のないことをなるべく効率化して、本質的な人の価値を生徒に届けたいという思いがあるからです。学校教員時代、もっとやりたいこと、届けるべきものがあるのになぜこんなに雑務に追われなきゃいけないんだと課題感を持っていました。
EdTechの価値は、効率化によって「人だからこそできること」に時間を使えるようになります。だからうちではそれぞれの業務に最適なICTツールを導入しています。
例えば授業の始めの10分では、Studyplus for Schoolを見ながら現状確認をしています。学習時間をStudyplusにまとめてもらうメリットは、それを見て「あれ、学習時間がこれくらいだね。どう思う?」など声掛けできることです。事実に基づいてしっかりコミュニケーションできますし、生徒も画面を見ると自分で気づけるようです。実際、「すらら、やっていなかったです」など自分から言い出します。
それから、記録から色々な気づきも得られます。あるとき生徒の勉強記録に「すらら 数学 10分」と書いてあって、10分でやめてしまったのかと思ってすららの学習管理画面を見たんです。すると難しい問題で詰まって、10分間その問題を考え続けてやめたということが分かりました。その時に「みんながつまずく所だから、次回やろう。飛ばしていいよ」とメッセージ送ると、安心して別の勉強を始められます。
振り返りについては「絶対こういう風に書いて」とは言っていません。やりすぎると形骸化していくというか、振り返りが目的になっていってしまうからです。生徒たちに運用を任せていると、一人ひとりの特徴が出て言葉に表れない何かが見えるので面白いです。
オンラインホームルームの効果
自粛生活が始まって3週間くらいから、生徒たちが少し疲れてきたような感じがありました。そのころはまだ感染者がどんどん増えていくのではという雰囲気もあったので、私自身も「この生活が9月頃まで続いたらどうしよう」など悶々と考えました。
そこで強く感じたのは、学校は子どもたちにとって勉強以外の価値もすごくたくさんあるということです。私は教員を2年間やっていましたが、学校の先生たちは子どもの心を育むという点に心を砕いています。
しかしオンライン指導では、生徒たちの豊かな心を育んだり、一人ひとりが居場所を感じられるようなつながりが薄まっているのではないかと気付いたんです。それによって心の安定が失われているのかもしれないと思い、自分たちでできることをやろうと決めました。
そこで始めたのが、学年ごとに週に一度Zoomで集まるホームルームです。同級生同士がつながるひとつのコミュニティにしようということで、お互いの名前と中学校、好きなものを紹介しました。それから事前に生徒にアンケートを取って自分の悩んでることを教えてもらい、それについて答えられる生徒がアドバイスするといったようなこともやりました。
GW前には、連休中の勉強計画も一緒に立てていきました。これは、漠然と計画したのではありません。受験が例年通り行われたら当日まであと295日だから、勉強できる時間はこのくらいしかない、それをどう使うかというような話し合いをしました。この時はStudyplusの学習時間ランキングを出して参考にしました。
他には、目標設定が上手くできている生徒を紹介したりします。やっぱり周りの子がやっているのを聞くと、自分もやろうかなと思って取り組むものです。
ホームルームをやってみて「すごく楽しかった」「もっと勉強しようと思った」という生徒がたくさんいました。実際に一週間で学習時間が10時間増えた生徒もいて、本当に驚きです。大人側から提供するだけではなくて、子どもたち同士で刺激し合うことの大切さが可視化されたと思います。
「なりたい自分になる」指導と保護者との関係
うちでは以前からディスカバリープログラムという、なりたい自分になるための授業をやっています。ここではゲストに来ていただき、なりたい自分を実現している人はどんな人生を歩んできて、どんなことに悩んで、どんなことを乗り越えてきたかという話をしてもらうんです。
このプログラムをオンラインでもやってみました。保護者も入れるようにしたのですが、「これによって家族のコミュニケーションがとれた」とか、親御さんにも響いたのか「私も生き方を考えさせられました」など言ってもらえました。
ディスカバリープログラムに限らず、オンライン指導を始めてたことにより塾の価値が見える化したことで、保護者との連携が強化されました。塾で普段やっていたことを自宅でもわかるようになったので、「うちの子はこういう風にやってるのか」と安心できたり、「ここが心配なんですけど」と相談してもらえたり、コミュニケーションが取れるようになったのは大きな変化です。
また、週末には保護者に、スタプラの勉強時間のアナリティクス画面とすららの勉強時間管理画面をスクリーンショットして送っています。それぞれ一言コメントを載せていますが、一人あたり5~10分ほどで作れます。一度やめようかと思ってこともありますが、すごく喜んでいただいているのて継続しています。
今後の塾運営とオンライン指導
緊急事態宣言が解除されて教室が再開できるようになっても、なかなか今まで通りとは行かないと思います。塾は従来、生徒の可処分時間や教室の広さなど制約があるものです。それが社会の変化によってさらに縛られるのではないでしょうか。3密を回避するためにも、自宅学習を進められるような仕組みを作ったり、生徒が家でもっと勉強できる体制を整えたりする必要があると思います。
もともと月・火・木・金を授業日、水曜日を面談日にして、講師2人で見られる生徒をできるだけたくさん呼ぼうと思っていたのですが、これを分散通塾させる形でオペレーションを組んでいます。
今日までを振り返ってみて、教室での指導からオンライン指導に切り変えても特に問題はなく、むしろ付加価値が生まれたのではないかと思っています。例えば講師と生徒が直接関われてはいないのですが、Zoomで一日40分話すようになって、逆に密度が高い関わりができるようになりました。
保護者にオンライン指導についてのアンケートもとっているのですが、「学校で人と話すことがないので、先生と喋るだけでもモチベーションが向上しています」とか「学習計画をきちんと立てているので、生活リズムもキープできています」といった声をいただきました。
生徒たちからも、「分からないところは事前に準備して教えてもらえるからで分かりやすい」とか、「成績が前より伸びると思った」と言ってもらっています。オンライン指導で個別指導になったことでできるようになったことがあるんです。
これからオンライン指導を続けるにしても、「なりたい自分に出会える塾」として、子供たちの学習意欲を育み主体的な進路選択の実現をするというビジョンとミッションをぶらさずにやっていきたいと思います。
***
Studyplus for Schoolについてのお問い合わせはこちら。